世界21位の大坂なおみ(20=日清食品)が試合中に泣いた。同13位のゲルゲス(ドイツ)相手に、第1セット5-3リードから追いつかれタイブレークで落とすと、6-7、3-6のストレートで敗退した。第1セット終了後のベンチでは、うまく集中できないのか、バジン・コーチと話す最中に、涙を見せた。

 戦う状態ではなかった。急激に力をつけ、4大大会に次ぐBNPパリバオープンでツアー初優勝。一気に時の人となった。自分は変わるつもりはなくても、周りは大きく変わる。その急激な変化に、心がついて行かない。

 前日の試合後に、「すべてがあまりにも早く変化して、とても疲れている」と話していた。純粋に強くなりたいと思っていただけなのだろう。しかし、強くなればなるほど、注目を集め、テニス以外の要求は増えていく。そして、それがプロというものだ。

 あこがれのセリーナ・ウィリアムズ(米国)や、マリア・シャラポワ(ロシア)ら女子トップ選手は、大坂の比ではない注目を集める。錦織圭も同じだ。そして、それを誰もが乗り越え、トップ選手としての地位を確立している。

 プレーのレベルが上がるだけでは、世界を転戦するテニスのプロツアーは生きていけない。純粋に強くなりたい時、敵は相手だったが、強くなってからの敵は自分自身なのかもしれない。それを乗り越えた時、初めて大坂が真のプロと呼ばれるのだろう。