【トロント(カナダ)8月30日(日本時間同31日)=高場泉穂】平昌(ピョンチャン)オリンピック(五輪)フィギュアスケート男子で冬季五輪2連覇を達成した羽生結弦(23=ANA)が練習を公開し、自分の原点に立ち返る新プログラムを発表した。ショートプログラム(SP)の「秋によせて」はジョニー・ウィア氏(米国)、フリーの「Origin(オリジン)」はエフゲニー・プルシェンコ氏(ロシア)と憧れの2人の演目が土台。肩の重圧を下ろし「自分のために滑る」シーズンにすると語った。

初披露したフリーの美しい4回転ジャンプに、激しく荒々しいステップに、憧れのプルシェンコ氏へのオマージュが込められていた。2度目の五輪王者として迎える今季。羽生は拠点のトロントで「初心に帰り、自分のために滑る」と狙いを語った。そう思えたのは五輪後、右足首の治療のため1カ月間スケートが出来なかった時期。ケガ、重圧を乗り越えた自分に報いるような演目にしようと考えた。ひらめいたのは、小学生の頃から温めてきたプルシェンコ、ウィア両氏の代表作を使うアイデアだった。

プルシェンコ氏。04年ソルトレークシティー五輪で見たオーラあふれる姿にひかれ、マッシュルームカットをまねるほど敬愛した。代表作「ニジンスキーに捧ぐ」はその頃から「ずっとやりたいなと思っていた」。SPの「秋によせて」もウィア氏の「男性だからこそ出せる中性的な美しさ」に衝撃を受け、繰り返し見てきた。この4月、2人に使用することを直接伝え、快諾してもらった。

自分のために滑るもう1つのこだわりがクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)だ。まだ練習でも成功していないが「今季中に跳びたい」と宣言。フリーの冒頭に入れるとした。「小学校低学年の時に1時間の練習で45分くらいアクセルしかやってなかった。降りた時の達成感がスケートを好きになっていった要因でもあった。(フリーは)アクセルを大事にしたプログラム」。“集大成”とも受け取れるが「いつやめるとかそういうのは全然考えてない。とりあえずアクセルまでは何とかしたい」。今は最大の夢を追い、ただ滑ることを楽しむつもりだ。