初出場の19歳、原田海(神奈川大)が金メダルに輝いた。決勝の4課題すべてを唯一完登し、ワールドカップ(W杯)でもまだ上ったことのない表彰台の中央に立った。16年前回大会王者の楢崎智亜(22=TEAM au)に続き日本勢がボルダリング連覇を達成。渡部桂太(25=住友電装)は4位、藤井快(25=TEAM au)は5位となった。楢崎智は準決勝敗退の7位だった。

19歳の新鋭が、涙の世界一に輝いた。原田は3課題目まで全ての課題を完登し、暫定1位で迎えた最終4課題目。「何で登れたのかわからない」と言うほど無我夢中で動き、1撃(1トライ目で完登)して優勝を決めた。壁から降りるとうずくまり、涙を流した。人生で初めてのうれし泣きだった。

持ち味である、ホールドをつかんで体勢を維持する「保持力」が光った。故郷大阪・岸和田市内のジムに10歳から8年間通った。「ジムが古くてホールドも(こなれて)つるつるのものが多かった。だからこそ落ちないように支える力がついたと思う」。最終4課題目、他の選手が何度も苦しんだ、勢いをつけて左への重心移動でホールドをつかむ動きを、1発でぴたりと仕留めたのも、このジムで磨いた保持力のたまものだった。

自分自身との闘いにも勝利した。自らに何度も言い聞かせたのは「いつも通りやれば大丈夫」。8月の世界ユース選手権ボルダリングでは、4課題目で逆転負けして3位。「ユースは最終課題直前に『絶対に登るぞ』と気合を入れすぎた。冷静にいつも通りやろう、と思えたのがよかった」。平常心で臨み、8月の悔し涙を晴らした。

20年東京オリンピックは「今もそんなに考えていない」と言う。3種目それぞれに意欲を持ち「全部楽しいし、全部強ければかっこいい」と笑う。16日(現地時間)の複合決勝にも1位通過し「初の複合世界選手権なので楽しく登りたい」。いつも通りを最後まで貫く。【戸田月菜】

◆原田海(はらだ・かい)1999年(平11)3月10日、大阪府岸和田市生まれ。10歳で競技を始める。大阪・羽衣学園高卒業後は神奈川大人間科学部に進学。ボルダリング世界ユース選手権は15年大会2位、18年大会3位。W杯最高位は17年の重慶大会5位。家族は祖母、母敬子さん。169センチ、55キロ。リーチの長さは約180センチ。