19歳の原田海(かい、神奈川大)が、ボルダリングの世界チャンピオンに輝いた。初出場の世界選手権で、W杯でも表彰台に乗ったことのない新鋭が、最高の結果を手にした。

大きな瞳に整えられた髪は、ジャニーズ系のイケメンだ。昨秋からアルバイトをするクライミングジム「フィシュアンドバード二子玉川」の酒井悠店長(27)は当初はトレーニングをしに来ればいいと提案したが「強いだけじゃなく、人として大切なことを学びたい」と原田は自ら接客を希望。「お客さんにも『できますよ!』と気さくに声をかけて登り方を教えています」と目を細める。

他人に左右されない意思の強さもある。大会期間中は、その日の試合終了後にも登ることで、翌日に手足の感覚を残すのだという。今大会も、練習会場で1人黙々と登り続ける姿を何度も目にした。「自分を持っている」と酒井さん。女手一つで原田を育ててくれた母敬子さんに「大会に出るのも、大学も神奈川での1人暮らしもお金がかかる。ありがとう」と素直な感謝も口にする。【戸田月菜】

◆原田海(はらだ・かい)1999年(平11)3月10日生まれ、大阪府岸和田市出身。10歳の時に近所のクライミングジム「スカイボックス」に行ったことがきっかけで競技を始める。羽衣学園高卒業後は神奈川大人間科学部に進学。ボルダリング世界ユース選手権は15年大会2位、18年大会3位。W杯最高位は17年の重慶大会での5位。家族は祖母、母敬子さん。169センチ、55キロ。リーチの長さは約180センチ。