女子は再春館製薬所が16-17年以来2大会ぶりの優勝を飾った。第1試合のダブルスでは今大会を最後に引退する藤井瑞希(30)が、小野菜保(21)とペアを組んで出場。高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)に敗れたが、第2試合のシングルスで山口茜(21)が、第3試合のダブルスでは志田千陽(21)松山奈未(20)組がいずれも2-0で勝利。若い力が大先輩のラスト試合に花を添えた。

藤井の最後の相手はタカマツペアだった。自分の背中を見てオリンピック(五輪)金メダルまで上り詰めた後輩との対戦だ。12月の全日本総合選手権、垣岩との最後の「フジカキ」の時もそうだった。

12年ロンドン五輪銀でバドミントン界史上初のメダリスト。9歳下の小野と組み「技術では劣るが、1ラリーでも多くやろう」と臨んだ。2ゲームとも12点しか取れずに敗れたが持っている技術と経験は、余すことなく伝えた。小野は「安心感があった。ダブルスを一から教えてもらった」と感謝の言葉を口にした。

藤井の奮闘に「チームの1本柱」と認められたエース山口が応えた。試合前は先輩のことを考えすぎて硬くなったが「監督と話したことで自分のプレーができた。後ろにつなげられて良かった」と2-0で勝利。低いラリーを得意とするが、大きく球を上げ、余裕を作って相手の攻撃に対応する作戦が功を奏した。

藤井から「若きエース」の自覚を植え付けられた志田、松山組は持ち味のスピードを生かし、積極的に前に出て考える時間を与えず、星、東野組との接戦を制した。志田は「準備はできていた。教わったことを思い出してプレーした」。

優勝の瞬間、試合では泣かなかった藤井の目から涙がこぼれた。後輩たちの逆転劇に試合後の取材では「最高の1日でした」と笑顔を見せた。4月からコーチとなる垣岩も「最高のバドミントン人生でした」と話した。今年のチームのテーマは「成長」。大先輩2人の技術や経験を身に付けた若い後輩たちが、最後となる2人に最高のプレゼントを贈った。【松熊洋介】