【ソルトレークシティー(米国)=矢内由美子通信員】平昌五輪の金銀銅メダリストの高木美帆(24=日体大助手)が女子1500メートルで1分49秒83の世界新記録をマークして優勝した。従来のタイムを1秒02も更新する史上初の1分49秒台で、W杯個人種目の通算10勝目。また、男子500mでは新浜立也(22=高崎健康福祉大)が連日の日本新記録となる33秒79でW杯3勝目を挙げ、女子500mでは小平奈緒(32=相沢病院)が36秒49で前日に続いて優勝し、W杯通算勝利数を28に伸ばした。

  ◇   ◇   ◇

圧倒的なスピードにスタンドが沸いた。高木美は脇目も振らずにどんどん加速していった。平昌五輪のこの種目で金メダルに輝いた同走のイレイン・ブスト(オランダ)に息づかいを聞かせることのない大差。電光掲示板に「1分49秒83」のタイムと「ワールドレコード」の文字が表示されると、観客席のボルテージは最高潮に達した。

「いつもなら1周目でブレーキをかけてしまうところがあるが、その殻を破りたいという気持ちがあった」(高木美)と、攻めのラップを刻んだ。出番は最終の6組目。前の組までのタイムの出方を見て想定タイムを上方修正したことが快挙につながった。

すべてをスケートに注ぎ込んで目指した平昌五輪で日本女子史上初の金銀銅メダルを獲得し、今季は気持ちの上がらない日々を過ごした。だが、前半戦のヤマ場だった昨年12月の全日本スプリント選手権で小平と競い合ったことで、封印していた本能が目覚め、闘志に火がついた。後半戦は世界距離別、世界スプリント、オールラウンドと主要大会が続く過密日程だったが、その中で抜群の強さを発揮。「一緒に戦える人がいるのが大きいのではないかと思う」とスケート仲間に感謝する。

初めて世界記録保持者という肩書を持つことになったが、「記録は保持するものではなく、みんなで塗り替えにいくもの」という考えを明かした。これに対してヨハン・デビット・コーチは「女子で初めて1分50秒を切った美帆の記録はすごい。間違いなく塗り替えられていくが、美帆にもそれはできる」と更新に太鼓判を押す。

ゴールの直後は、今季で一番派手なガッツポーズが自然と出た。けれども、表彰式の後はもう「世界記録はうれしいけど、満足感はない。また追求していきたい」とさらに上を見ていた。今季のラストレースで飾った有終の美は、来季の第1歩となる。