まさに理想の完璧なテニスだった。2連覇を狙う世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、世界のテニス界が注目した好カードで、大会推薦出場で、15歳の天才少女、コリ・ガウフ(米国)を完全に破壊した。「過去にないほど集中した」と、6-3、6-0の1時間5分で勝ち16強入りだ。

そして試合後に、信じられない感動的な場面が待っていた。大坂はガウフに「一緒にインタビューを受けよう」と誘った。敗者と一緒にインタビューを受けるなど、前代未聞の誘いだった。全米の期待を一身に集めた15歳の少女へ、「1人でシャワーを浴びながら泣くより、みんなと話した方がいい」という大坂なりの配慮だった。ガウフは「泣いちゃうからいい」と1度は断ったが、ともに並んでインタビューを受けた。「学ぶことがたくさんあった。なおみ、本当にありがとう」とガウフが泣けば、大坂も「一緒に努力して、この舞台に立った。本当に素晴らしかった」と涙を見せた。

驚異的な集中力だった。ひざが深く曲がり、体が深く沈み込んだ。相手のショットに負けないように、体を壁にし、しっかりと返球した。何度もこぶしを握りしめ、最初から最後まで、その闘争心は途切れることはなかった。

しかし、プレーは冷静だった。今大会で見せているミスを減らすプレーと、持ち味のパワフルなショットが完全に融合。攻守がしっかりとかみ合い、究極の全くスキのないプレースタイルができあがった。

統計を見れば明らかだ。過去の大坂は、凡ミスも多いが、それを補う決定打の多さで勝ち上がってきた。ガウフは凡ミスの少なさが武器で、相手に凡ミスを誘うのがスタイルだった。しかし、この日、ガウフの凡ミスが24本に対し、大坂は17本。7本も少なく、決定打は、大坂が24本でガウフの3倍にも達した。

凡ミスが少なく決定打が多い理想のテニスを、ついに大坂が作り上げた試合だったかもしれない。「私もこの試合で成長できた」。再び大坂の快進撃が幕を開ける時が来た。

 

◆全米オープンテニスは、WOWOWで8月26日~9月9日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。