【シュツットガルト=阿部健吾】男子予選で日本の新星が大きく輝いた。日本勢史上2人目の高校生代表の橋本大輝(18=千葉・市船橋高)が、演技した4種目全てでチーム最高点を稼いだ。新エース谷川翔(20)が足を痛める窮地にも、頼もしくチームを鼓舞し続け、6種目合計258・026点で上位につけた。昨年は3位に敗れた決勝(9日)、さらに東京五輪へ向けても明るい材料となった。

     ◇     ◇     ◇

橋本は心に決めていた。「会心の演技ができたら…」。最初のあん馬。流れるような旋回で動きを止めずに着地までつなげると、人生初のそれは出た。「もっと会場を盛り上げ、声援をチームメートのみんなにも浴びせて、それで良い試合ができるように」。繰り出したのは両手を下から上に振り上げ、声援をあおるしぐさ。初の世界舞台と思えない意図と大胆さだった。

1万5000人収容の会場の雰囲気に、いつもの楽しさが重なった。「市船と同じで、にぎやかでうるさかった」。昔から試合中は誰でも構わずに応援してきた。それがライバル校であっても。「海外の人は失敗しても拍手で盛り上げたり」。自分のスタンスに同調するところがあった。それで気持ちはさらに乗った。

練習で旋回50周をやるなど、地道にきつい努力をしたあん馬は、国内以上の高評価を引き出した。跳馬の14・766点、鉄棒の14・366点、床運動の14・433点まで全てチーム最高点。水鳥監督に「ワクワクするすごい強さ。東京に向けて欠かせない選手」と言わしめた。

決勝では勝負パンツも投入する。験担ぎの赤2枚を持参も、会場練習で1枚使い、「もう1枚は決勝で」とこの日は黒。「今日以上の出来をだしたい」とまだまだ、あおり足りない。