常翔学園の野上友一監督(61)が豪快に笑った。「ハハハッ! あれが糧になるかどうか知らんけど、ほんまビックリするわ」。前半22分、スクラムから出たパスを1年生SO仲間航太が御所実の圧力にキックを焦り、ゴール前でこぼし、3本目のトライを許した。あり得ぬミスだが、責める気はない。

正直、完敗だ。我慢をテーマに風下のサイドを選んだ前半は0-19。御所実の厳しく、組織的な動きにゲインが切れず、ミスをして失点を重ねた。

指揮官は、それでも教え子をたたえる。高校日本代表候補は「相手が上。力不足でした」と泣いたプロップ為房慶次朗主将だけ。「3年生で、入学時から今が予想できたん(の)は為房(CTB)岡野…ぐらいかな。こんだけ鍛え上げた代は珍しい」。大阪の素質ある中学生は東海大大阪仰星、大阪桐蔭へ、他府県にも流れる。昔のように有望な選手は集まらない。「ウチはもう(中学生の)憧れじゃない」と苦笑いする時代だ。

7大会前の優勝を見て、常翔学園に来たSO仲間は泣かなかった。ポロリもした。キックミス(ダイレクトタッチ)からもトライを許した。「受けたことのない圧力。1年でこんな経験をさせてもらって光栄ですが、花園の借りは花園で返します」と負けん気をむき出しにした。

前回大会8強。今回は7大会ぶり4強。次回大会で4勝すれば秋田工、天理に次ぐ3校目の100勝だ。ライバル、時代と戦う常翔学園には、負けても伝統が息づいている。【加藤裕一】