世界中の人たちが、新型コロナウイルスの感染拡大に悩まされている。新連載「ウイルスと闘う世界の国から」では、主な国の生活やスポーツなどの事情を、現地で暮らす人たちの目線で紹介する。

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23日夜、イギリスにもついに外出禁止令が出た。21日には国内感染者数が初めて1日で1000人を超えた。23日夕方、英政府の緊急会議が開かれた直後、ジョンソン英首相からの発表があった。

今月7日の時点で英国内の感染者は、200人あまりしかいなかった。それが約1週間後の13日には、4倍の800人弱まで増加した。サッカーのプレミアリーグは中断。自宅のあるウェールズの首都カーディフで開催されたラグビーの欧州6カ国対抗ウェールズ対スコットランドの試合も中止。それでも街には両チームのサポーターが集まったり、買い物をする地元の人たちも多数いた。まだ切迫感はなく、日常に近い生活だった。

 事態が一変したのは16日、ジョンソン首相の会見があってからだ。オフィス、パブやシアターなどで、他人との不必要な接触を避けるようにと、国民に呼び掛た。高齢者や妊婦、基礎疾患のあるなど医学的にリスクが高いとされる人たちには12週間、外部との接触を断つべきと訴えた。

 その直後から、従業員を自宅勤務させる会社が続出した。コンサートなど、人が多く集まるイベントも立て続けに中止。数日後には学校の休校、高校進学や大学進学に必要な統一試験の中止も発表された。「ロンドンが、近く封鎖される」との噂も広がった。

 18日には感染者が約2600人、21日には計5000人、死者も200人を超えた。わずか2週間で25倍も感染者が急増した。不安に陥った市民の買い占め行動は広がっている。当たり前の日常が崩れた。ロンドンでは、スーパーマーケットに入るために早朝から並ぶ様子が報じられ、実際に地方都市のスーパーでさえ、トイレットペーパー、保存食品や冷凍食品が陳列棚から消えた。

 欧州諸国で急速な拡大を見せる新型コロナウイルス。アジアと比べ、あいさつなどで体の接触が多いこと、イタリアの平均年齢が欧州で一番高いことなどが理由だと報じられている。個人的に思うのは、国民性の違いだ。バスク地方に住む知り合いのスペイン人は、政府から外出禁止令が出された日に、サーフィンをするために外出。公園やビーチにも人があふれていたという。勤勉で規律性の高い日本人が慎重な行動を取っていることで感染拡大の防止につながっているのかもしれない。もちろん、油断大敵だが。

 困難な状況の中、光明はある。英国内では、一般市民の間で助け合おうとする動きがある。閉鎖するように通告されたカフェやレストランは、政府のガイダンスに従いテイクアウトやデリバリー形態を導入。このようなサービスを市民ができる限り活用することで、個人経営者をサポートする運動も広がる。まだ先は見えないが、助け合いながら、冷静に行動することが大事だと改めて気づかされた。1日でも早く日常が戻ることを願う。(A・アウグスティニャク通信員)