米国テニス協会は24日(日本時間25日)、8月31日に開幕する4大大会全米オープン(ニューヨーク)として、9月10日から新たに車いすテニスの男女単複、クアッド(四肢マヒ)単複を追加開催すると発表した。同協会は、17日に全米オープンを無観客で行うと発表した当初、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、通常から、車いすテニス、ジュニア、混合ダブルスなどの種目を開催しないと明らかにしていた。しかし、その後、車いすテニスの選手が、種目を削るのは「差別だ」と発言。国際パラリンピック委員会も再考を表明していた。

車いすテニスが開催されることは、非常に喜ばしいことだ。同競技もプロ選手が存在し、3月からのツアー中断で、生活がピンチに陥っている選手もいるという。しかし、同協会が当初、車いすテニスの開催を中止したのは、新型コロナ予防対策で、「3密」にならないように、少しでも会場や宿泊する人数を減らすためではなかったのか。

異議を申し立てられたから変更するのでは、「ごね得」だと指摘されても仕方ないだろう。ジュニアらは、プレーしたくても声も上げられないのだ。

ツアー再開、全米オープン開催には、多くの選手から時期尚早だという声が上がっている。その中、同協会は、徹底的な感染予防対策を取ることで、リスクを背負いながらテニス再開にかじを切ったのではなかったのか。決断がコロコロ変わっていては、その予防策は何だったのかということになる。

男子テニスで世界王者のジョコビッチ(セルビア)が主催する慈善大会で、マスクや社会的距離がなく、ジョコビッチを含む感染者が続出したばかりだ。テニス界は、あまりにも迷走し続けている。【吉松忠弘】