女子テニスで、2度の4大大会優勝を誇る世界10位の大坂なおみ(22=日清食品)が、いよいよ戻ってくる。全米オープン前哨戦で、22日にニューヨークで開幕するウエスタン・アンド・サザン・オープンのオンライン会見が21日(日本時間22日)に行われ、コロナ禍の中断期間中「私はいろんな面で大きく成長した」と、充実した自信をのぞかせた。大坂は第4シードで、2回戦からの出場。対戦相手は予選勝者-同26位のムホバ(チェコ)の勝者となる。

大坂が最後に実戦を戦ったのが2月7日の女子国別対抗戦フェド杯スペイン戦。日本のエースとして出場したが、世界78位に完敗した。それ以来、約半年ぶりに世界の舞台に戻ってくる。「ここにいられることが、本当に幸せ」と、待ちに待った試合に心も躍る。

他の選手と同様に「こんなに長い間、テニスから離れたことはなかった」。昨年12月に就任したフィセッテ新コーチとともに、5月ごろから「しっかりと練習していた。私の武器のサーブに取り組んだ」。シャラポワや錦織を指導した経験を持つ中村豊トレーナーが新たに就任し「体はフィットしている」と自信を深めた。

テニスだけではない。この中断期間に「成長したかった。テニス選手ではなく、1人の人間として、自分を見てほしかった」と心境の変化を明かした。そして「言いたいことを隠さず、シャイじゃない自分になりたかった」と、精神的な成長を強調する。

5月に起こった米中西部ミネソタ州の黒人男性暴行死事件をきっかけに、人種差別撤廃のデモが各地で起こった。大坂も自身のSNSで「何も言わないのは賛成しているのと同じ」と、差別に抗議する発信を続けた。また、新型コロナに対しても、姉まりとともにデザインしたマスクを販売。完売した収益を国連児童基金(ユニセフ)に寄付した。

人種差別、新型コロナに対し積極的に活動を行い、“なおみ節”と称された天然でシャイなイメージを「私は以前とは違った人になったような気がしている」と、完全に壊した。「めざましいものだったかどうかは分からないけど、私のこの経験は、絶対に役に立つ」。女子選手史上最高額の年収40億円を稼ぎ出す世界のトップアスリートが、復活へ大きなステップを踏み出す。【吉松忠弘】