今季限りでの現役引退を発表したラグビー元日本代表FBの五郎丸歩(34=ヤマハ発動機)が16日、浜松市内で記者会見を行い、15年W杯時に社会現象となった「五郎丸ポーズ」について複雑な思いを明かした。

五郎丸がキックする際に両手を体の前で合わせる「五郎丸ポーズ」が話題になり、新語・流行語大賞の候補にもなった。五郎丸個人が注目されたことに、「ラグビーをずっと続けてきた人間としては非常に違和感を覚えた。ラグビーは誰かヒーローが出るわけではなく、チームみんなが仕事を全うして勝利がみえる競技性をもっている」と、チームスポーツであることを強調し、当時の複雑な思いを吐露した。

その一方で、ラグビーが日本で広がっていないことにも気付き「私の仕事というか…ラグビーの魅力を伝えて広げることが、自分の使命だと思ってここまでやってきた」と説明。現在の気持ちとしては「最初は少しきつかったが、考え方を変えれば素晴らしい機会をもらった。あのポーズから入って、ラグビーを好きになる人、違う選手を好きになった人が1人でも多くいれば続けてきた意味はあると思う」と穏やかな表情で語っていた。

◆五郎丸のルーティン ボールを2度回してセットした後、3歩後ろに下がり、左横に2歩動く。下から上へ押し上げるように右手を振り、祈るように両手を組み合わせた後、8歩助走して蹴る。キックする際には、同じテンポで助走するために「ドレミファソラシド♪」のリズムを自身で唱えてステップする。ただヤマハ発動機に復帰した17年には「五郎丸ポーズ」は封印。動作の省略について「イメージは体に染みついている、大事なのは体重移動」と話した。

◆ルーティン プレー前に選手が一定のパターンの動作を取ること。メンタルコントロールの1つで、大事な試合などでベストパフォーマンスを引き出すために練習段階から「定型」を決めておく。本番でもそれを履行することで緊張や不安に襲われず、精神状態を落ち着けて安定したプレーにつなげる意図がある。元メジャーリーガーのイチロー氏のバッターボックスでの一連の動作や、フィギュアスケート羽生結弦が演技のスタートポジションに向かう際の動きなども有名。