12年ロンドン五輪で女子日本代表を銅メダルに導いた真鍋政義取締役球団オーナー(57)が、約5年ぶりに“監督”となった。Vリーグ1部(V1)ヴィクトリーナ姫路の全選手が出場したエキシビションマッチ(紅白戦)で「ヴィックチーム」を指揮。16年リオデジャネイロ五輪後はチーム運営を行っており、1日限りの現場復帰になった。

ユーモアあふれる名将が、会場に駆けつけたファンを楽しませた。第1セット、5-10とリードを許した展開で、ベンチから「チャレンジ!」と声を上げた。

公式戦ではないため、判定の準備はされていない。まさかの展開に選手たちからも思わず笑みがこぼれ、審判団は真剣に協議を始めた。会場の誰もが「?」マークを浮かべる展開を経て、主審は「監督の猛烈なアピールにより、ワンタッチを認めます」。貴重な?1点をもぎり取った。

第2セットは「竹下佳江が後ろにいますので、よろしくお願いします」と事前想定になかった“監督交代”。元日本代表の名セッターで昨季まで姫路を監督として率いた竹下佳江球団副社長(42)に、急きょバトンタッチした。

スーツ姿の竹下副社長は冷静に選手へ指示を送り、最終セットは真鍋オーナー、竹下副社長の「ダブル監督」。データバレーを武器に、世界で戦ってきた2人はタブレットを駆使した。画面の裏には「公式ファンクラブ会員大募集中」のシール。用意周到な演出で見る者を飽きさせなかった。

試合は中谷宏大監督(40)が指揮する、相手の「リーナチーム」に0-3で完敗。中谷監督は「『小芝居しているな…』って思っていました。『何かやるだろうな』というのは、織り込み済みでした」とチーム幹部の仕掛けを振り返った。

当初はこの日、V1のPFU戦が組まれていたが、相手が新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令地域での試合出場を辞退。姫路はファンに日頃の感謝の気持ちを伝えようと、シーズン中では異例のエキシビションマッチを企画した。

中谷監督は「観客(動員)の制限がなかったら、今日も満員になっていたと思う。これだけの後押しをしていただき『このチームを応援しているぞ』という熱気が伝わってくる。『ありがたい』の一言です」と思いを口にし、公式戦での奮闘を誓った。【松本航】