1月に全国大学ラグビー選手権初優勝を果たした天理大が16日、奈良・天理市内で新チームの練習を本格的にスタートさせた。

新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、部員の帰寮から一定の期間は学年ごとに活動。同学年の面々と体力測定を終えたフッカー佐藤康(こう)新主将(3年=天理)は「2連覇をあまり意識せず、関東勢に対してもチャレンジャー。その結果、あの舞台に立って、同じ景色を見たい」と王者の立ち位置を示した。

主将が決まったのは1月下旬。寮の一室で小松節夫監督と向き合い、大役を任せられた。本年度の全国大学選手権でも主力で活躍。佐藤は「4年生が抜けて、今はこれといった色もない」と分析しつつ「その分、レギュラー争いが激しくなる。自分も周りにいいフッカーがいる」とチーム内競争に伸びしろを見いだす。

168センチ、95キロのFW第1列だが、元々はSOだった。4歳の時に地元新潟の「ニシカンジュニアラグビークラブ」で競技を始め、中学まではBK一筋。奈良・天理高に進学し「入った瞬間、ネームプレートがFWのところにあった。当時は身長が同じ(168センチ)で体重が80キロぐらい。“肉々しかった”からですかね」と笑った。

同じ天理高-天理大で活躍したSO林田拓朗(23=栗田工業)に憧れたが、気付けば定位置がFW第1列になった。50メートル走は6秒7。全国大学選手権決勝の早大戦では、とっさの判断でラックからボールをさばき、CTB市川敬太(4年)の先制トライを演出するなど、BK仕込みのプレーにも定評がある。

小松監督は主将を任命した理由について明かした。

「プレーで引っ張って欲しい。昨年のシーズンですごく伸びた選手。両プロップの4年生(谷口祐一郎、小鍜治悠太)が抜けますし、フッカーとしてスクラムをまとめ、スローワーとしてもラインアウトで重要な役割がある。そういう部分に期待をしています」

佐藤はNTTドコモに進む前主将のフランカー松岡大和ら4年生から「前の学年をまねする必要はない」と背中を押された。大学日本一になってからは、天理市内で食事する際にサインや写真を求められるようになったという。「地元の方にここまで喜んでいただけるとは思っていなかった」。声援を力にし、新主将は自らの役割をかみしめた。

「僕はしゃべるのが苦手。プレーで引っ張っていきたいです」

全国大学選手権2連覇、関西6連覇を目指す戦いが始まった。【松本航】

 

◆佐藤康(さとう・こう)1999年(平11)5月10日、新潟市生まれ。4歳の時にニシカンジュニアラグビークラブで競技と出会い、天理高へ進学。全国高校大会(花園)に出場した1年時はベンチ入りできず、2、3年時は奈良県予選決勝で御所実に敗れた。天理大フランカーとして18年度の全国準優勝に貢献した佐藤慶(豊田自動織機)はいとこ。168センチ、95キロ。