18年ユース五輪5冠、18歳の北園丈琉(徳洲会)が87・332点で首位通過を決めた。6種目を高水準でまとめきり、最年少優勝に王手をかけた。この日の予選、決勝(18日)の得点を持ち越して行われるNHK杯(5月、長野)で上位2人に入れば、東京五輪の団体代表に決まる。残りの2人は全日本種目別選手権(6月、高崎)にチーム貢献度で選ばれる。

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「何もなかったですね。ほんまに、よくも悪くもって感じです」。競技開始前の心境を聞くと、関西弁で「凪ぎ」を強調した。

五輪開催が1年伸び、5年に一度の選考会。例年の全日本と違い、夢舞台への思いが心身に何かを起こす。昨年全日本王者の萱は「周りで結構ミスが出ていた。違う空気があるのかな」、谷川航は「試合に入り込めなかった。フワフワした感じで、体を操れなくて、いつもと違う感じになった」と試合後に言った。ただ、北園には何も起こっていなかった。それが首位発進の要因の1つだった。

「昨年の全日本では逆に緊張したんです」。反面教師にしたという。1種目目の跳馬、大技「ヨー2」は前のめりになりながら踏ん張った。「少し力が出て、本来もう少しいいの跳べるんですけど」と高いレベルでの反省が力強い。5種目目、得意種目のあん馬を持ち味の開脚、旋回スピードの速さで通しきると「ほっとした感じが強くて」とピースサイン。全日本では失敗した種目の反省を、ここでも生かした。

東京五輪が決まった13年は小5だった。「自分はこの舞台に絶対に出たいという思いがあり、取材とかでもそこを目標にと口に出してきた」。以来、ブレはない。本来は体操の名門、大阪・清風高3年で五輪を迎えることに運命を感じてきた。かなわなかったが、進路にはこだわった。大学の勧誘を断り、実業団の徳洲会へ。拠点を大阪から変えなかった。

ユース五輪で5冠後、身長は20センチ以上伸びた。コロナ禍で練習が積めなかった期間の1カ月でも1センチ伸びた。体形変化で感覚が狂う選手もいるが、「感じない」という。力強さ、雄大さも備えつつある。

18日の決勝で優勝すれば、18年大会の谷川翔の19歳を更新する最年少優勝になる。「自分のやるべきことやれれば結果は付いてくる」。その口調は、演技前の心境に似て、穏やかだった。【阿部健吾】