最初で最後の夢舞台へ、チャンスは逃せない。

ラグビー日本代表の大分・別府合宿に追加招集されたフッカー庭井祐輔(29=キヤノン)が7日、23年W杯フランス大会に懸ける思いを明かした。初出場を目指した19年W杯日本大会は、同年1月の右アキレス腱(けん)断裂の影響もあって落選。ワイダースコッド(候補)として代表選手の不測の事態に備えたが、W杯出場はならなかった。

現在参加する別府合宿はW杯以来の代表活動。だが、当初は21年度日本代表候補選手に名前がなかった。

トップリーグの全日程を終えた5月末、生まれ育った兵庫の後輩にあたる19年W杯日本代表フランカー徳永祥尭(29=東芝)と、気分転換でサイクリングに出かけた。その日、キヤノンの永友洋司ゼネラルマネジャーから連絡が入った。

「明日から代表に行ってくれ」

同じフッカー中村駿太(サントリー)の負傷に伴い、6月1日に合流した。

心身の状態は、いきなり100%とはいかない。それでも「光栄なことで、僕としてもうれしかった。『大丈夫かな?』と心配な部分もあったけれど『他の選手よりも休めた』と考えた」と前向きに切り替えた。23年W杯へ、チャンスが何度もあるとは限らない。

「(W杯は)一番大きいターゲットで、自分の夢でもあります。年齢的なことも考えると、W杯の挑戦は最後になる。何としても、かなえたい夢です」

10月で30歳。競技を問わず、刺激を与え合う存在がいる。その1人が、陸上男子やり投げのディーン元気(29=ミズノ)だ。

神戸市で生まれ、母校の隣の小学校にディーンがいた。高校は庭井が報徳学園高、ディーンが市尼崎高で同じ阪神地区。ディーンからは、今も「地元に帰ったら、一緒にトレーニングしよう」と言われるという。

12年ロンドン五輪に出場した友は、故障による低迷を経て、現在は夏の東京五輪を目指す代表争いの中心にいる。ニュースやSNSで情報収集しているという、庭井の口調も弾んだ。

「やっぱり知っている選手が活躍しているのは、すごく刺激になります。年齢の部分でも境遇が似ている。刺激をもらうだけじゃなく、相手にも与えたい」

12日の強化試合を経て、欧州遠征では全英&アイルランド代表ライオンズ、アイルランド代表とのテストマッチを予定する。庭井はベクトルを自分に向けた。

「アピールしたいのはセットプレー、接点の部分。ライオンズと戦う、またとない機会になりますが、自分のやることにフォーカスしてやっていきたいです」

覚悟は決まっている。【松本航】