東京五輪代表の池江璃花子(21=ルネサンス)が世界選手権(6月18日~7月3日、ブダペスト)の出場権を逃した。最終日は得意種目の100メートルバタフライに出場。57秒89で1位となったが派遣標準記録には0秒10届かなかった。リレーの選考からも漏れた。もっとも前日までの涙はなく、この日は優勝を前向きに捉え、すがすがしい表情を浮かべた。

池江璃花子派遣標準0秒1足りず…100mバタフライ優勝も代表内定逃す「未来につながれば」>>

もう涙はない。狙っていたタイムには届かなかったが、優勝の事実に、池江は納得の表情を浮かべた。プールサイドに上がる前からむせび泣いた前日とは一転、穏やかな口ぶりでインタビューに答えた。「まずは優勝できたことをうれしく思う。昨日は棄権しようかと悩んだが、自分のために泳いで未来につながればと思った」。

決勝ラインぎりぎりとなる全体8位での予選通過となったため、1番外側の8コースで決勝に臨んだ。スタート時のリアクションタイムは、全8選手中最も遅い0秒72。それでも今の自分のベストを尽くすことだけを考え、懸命に泳いだ。伸びやかなフォームで前進し、前半50メートルを29秒96のトップでターン。終盤に力尽き、派遣標準記録には0・10及ばなかったものの、堂々の1位でフィニッシュ。予選からタイムを1秒7短縮させた。

同じように先頭でゴールしながらも0・06秒及ばなかった前日は悔し涙に暮れたが、「勝っても勝てなくても、今日は泣かないで帰ることを目標にしていた。それで順位がついてきたので良かったなと思う」。

100メートル自由形と同バタフライでメドレーリレーでの派遣タイムはクリアしていたが、日本水連による選考委員会で女子メドレーリレーの派遣はしない方針が決定。5年ぶりの世界選手権出場は消滅した。とはいえその方針が決まる前から「世界選手権以外にも、ワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)だったり、いろんな大会がある。そこで経験を積んで自分の競技力を上げていければ」と前向きに話していた。

目標の24年パリ五輪出場へ。遠回りしても、自分を見失うことなく1歩ずつ進んでいく。【奥岡幹浩】

◆第19回世界選手権 6月18日から7月3日にかけて、ハンガリーの首都ブダペストで開催される。当初は21年7月に福岡市で行われる予定だったが、コロナ禍による東京五輪1年延期に伴い、いったんは今年5月へと順延された。さらにその後、オミクロン株の感染拡大を受けて来年7月への再延期が決定。それを受けて今年2月、ブダペストでの開催が急きょ決まった。競泳、飛び込み、水球、アーティスティックスイミング(AS)、オープンウオーターを実施。