BMXの新星、早川起生(きお、20)が、初出場のXゲームで涙の優勝を果たした。早川は19年ぶりにXゲームで実施されたフラットランドに出場。1対1のバトルを勝ちあがり、決勝で44歳のアレックス・ジュメリン(フランス)を破った。

「すごくうれしい。言葉にできません」。早川は涙を隠さなかった。勝利の直後にはライバルたちに胴上げされた。「映像で見ていた人たちと一緒にできて、勝てた。リスペクトしていた人たちにリスペクトしてもらった」。初々しく言った。

日本初開催のXゲームでフラットランドの19年ぶり実施が決まり、補欠に選ばれた。招待選手に欠場者が出た場合、繰り上げになる。「ケガとかコロナ感染とかを願うこともできないし、出場はないと思っていた」。

それでも出場に向けて準備はしてきた。「出られた時、いい走りをしたかったから」。朗報は3日前の夜。英文のメールを何度も読み返した。毎晩、Xゲームに出場する自分の姿を想像して寝付けなかったという。

新潟・長岡市出身。12歳の時にBMXフラットランドを始めた。平らなステージでBMXを操ってトリックを繰り出し、難易度や独創性、芸術性を競う「BMXのフィギュアスケート」。普段は市内の空き倉庫を借りて練習している。「地元にはパークをする施設がなくて、フラットランドならどこでもできた」と始めて、のめりこんだ。

昨年7月にジャパンカップで初優勝すると、8月には世界のトップライダーが集まったスイスの大会で優勝。年末には世界中のプロライダーの投票による世界最優秀選手に選ばれた。そして、今大会で「世界チャンピオン」の称号を獲得。「もっと練習して、これからも世界チャンピオンであり続けたい。自分が多くのライダーを目標にしたように、子供たちの目標になりたい」と話した。

昨年の東京五輪閉会式にパフォーマーの1人として参加。「いろいろな競技の人と話し、すごく楽しかった。オリンピックいいですね」。東京大会でパークが五輪競技となり、フラットランドの五輪入りも可能性が出てきた。もし、五輪でやるなら「出たいです」。30代後半から40代も多い競技に飛び出した20歳の王者は、目を輝かせるように言った。【荻島弘一】