B2福島ファイヤーボンズは今季、Bリーグ参入後初めてのプレーオフ(PO)進出をつかんだ。高い得点力の要となっているのは、昨季から福島でプレーするフィンランド代表の兄エリック・マーフィー(31)と、今季から福島に加入した弟アレックス・マーフィー(29)の「マーフィー兄弟」だ。福島の躍進を担う、仲良し兄弟の福島での生活ぶりやその素顔に迫った。

   ◇   ◇   ◇

日本での生活はすべてが良い経験だ。兄エリックが来日した20-21年、弟アレックス来日の21-22年はともに、新型コロナウイルスが猛威を振るった。だが、エリックは「初めてのアジアの国での体験は面白いものばかり」と話す。中でも遠征先で近所を散策することがいい息抜きになっているという。エリックは「チームメートと出かけることが1番楽しいです。新しい環境で新しい友達ができることはいつもいい経験になっています」と、気軽に出かけることができない環境の中で、有意義なひと時を楽しんでいる。

兄エリックの存在が心のよりどころだ。弟アレックスは来日のきっかけを「エリックと一緒にプレーできることが1番の理由。日本での良い経験も聞いていたので迷うことはなかった」。そして福島を、「静かですごく良い場所。今年1年良い年になっている」と評し、「スポーツをやっていると家族が離れることが多い。エリックの存在がすごく力になっています」と、兄の存在に感謝した。

そんな仲良し兄弟も日本食の好みはやや異なる。好きな日本食に王道の「ラーメン」や「すし」を挙げた2人だが、意見が分かれたのは「納豆」。エリックは「納豆は味も食感もダメ。嫌いです」とけんもほろろ。だがアレックスは、「今のところ嫌いな食べ物はありません。納豆も食べられます、おいしいよね」と笑顔。アレックスは今季664得点の大活躍しており、もしかしたら日本食への順応性の高さが活躍に影響しているかもしれない。

東日本大震災発生11年から5日後の3月16日、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生。2人が住む郡山市は震度5強を観測した。エリックは「外に逃げ出しました。僕らは地震の経験が全然ない。とても怖かった」。アレックスは「(揺れている間)ベッドにしがみついているしかなかったです。いつ終わるか分からないし、長かったし本当に怖かった」と語り、地震の恐怖について振り返った。

震災を機に「復興のシンボル」として設立したファイヤーボンズだからこそ、プレーでブースターに恩返しする。地震の被害は大きく、ホームアリーナの「宝来屋郡山総合体育館」では試合を開催できなくなった。試合会場の変更も相次いだが、それでもブースターは“応炎”に駆けつけてくれた。その姿にエリックは「僕らは11年前の時の気持ちは分からないかもしれない。でも、コート上でプレーすることで少しでも元気づけられたら」。アレックスは「僕たちがプレーすることで幸せを届けられたら。こうやって異国の選手を応援してくれるのはとても価値のあること。みんなに『大好きだよ』と伝えたい」と力強く語った。

30日には今季最終戦、ホーム田村市総合体育館で奈良を迎え撃つ。POも、初戦のクオーターファイナルは仙台にホーム開催権を取られたが、セミファイナルでのホーム開催の可能性が残されている。「マーフィー兄弟」がかじを取り、福島へ「B1昇格」という最高の恩返しを実現する。【濱本神威】