15年に54歳で亡くなった斉藤仁さんの次男、立(たつる、20=国士大)が初優勝した。親子2代で全日本制覇は史上初。

191センチ、165キロの恵まれた体格を生かし、決勝では21年世界選手権優勝の影浦心(26=日本中央競馬会)との14分超に及んだ死闘を制した。

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斉藤親子を指導した国士舘高の岩渕公一監督(67)は会場で雄姿を見守った。「あの入場時の首を振るしぐさがオヤジにそっくりでさ。ダブって見えちゃったよ」と感慨もひとしお。父との共通点に「体が大きいと普通は硬いイメージがあるけど、天性の体の柔らかさがある。そっくりだね」と体質もダブらせる。

一方で課題だったのがパワーだった。「斉藤はものすごかった。(立は)まだまだ」。高校時代は「ケツも小さいし、ハム(太もも)も小さい」とハッパを掛けていたという。この2月からは、国士舘大陸上部投てき部門の監督で日本代表スタッフ経験もある岡田雅次コーチに特訓を依頼。週3、4回、時には4時間もウエートに励ませた。立自身も「足腰、鍛えられたので、すごくでかかった」と実感する。

試合終盤に諦め、雑になることも減った。岩渕監督は「メンタルが強くなったね。オヤジは卒業してぐーんとまたパワーアップした。まだまだだよ」と優しくも厳しく、伸びしろに期待していた。【阿部健吾】

◆斉藤立(さいとう・たつる)2002年(平14)3月8日、大阪府生まれ。東京・国士舘高-国士舘大3年。6歳から柔道を始め、恵まれた体格と父譲りのセンスの良さで、大阪府のタイトルを総なめ。男子100キロ超級で18、19年全国高校総体、18年全日本ジュニア体重別選手権優勝。21年のグランドスラム・バクー大会でシニアの国際大会初制覇。得意は体落とし、払い腰。191センチ、165キロ。

◆斉藤仁(さいとう・ひとし)1961年(昭36)1月2日、青森市生まれ。国士舘高-国士舘大と進む。1984年ロサンゼルス、88年ソウルの両五輪で95キロ超級連覇。83年世界選手権無差別級優勝、86年アジア大会95キロ超級優勝、88年全日本選手権優勝。引退後は全柔連の強化委員長、国士舘大教授を歴任。15年1月20日、肝内胆管がんのため54歳で死去した。