ついに悲願の“B1昇格”を成し遂げた。仙台89ERSが16日、香川ファイブアローズとのプレーオフ(PO)準決勝第3戦で83-69と快勝。ジャスティン・バーレル(34)が7本のダンクシュートを含む両軍最多31得点、月野雅人(33)が4本の3点シュート(3P)を含む14得点と躍動。主将を務める2人がけん引し、16-17シーズン以来6季ぶりとなるB1復帰にチームを導いた。仙台はこれでPO決勝に進出。今度はB2優勝をかけて20日からFイーグルス名古屋と対戦する。

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チーム全員がキーマンだった。藤田弘輝ヘッドコーチ(HC=36)は今季開幕前に「キーマンは全員。試合によって活躍する選手が変わってほしい。誰かを抑えれば勝てるというチームにはしたくない」と語っていたが、B1昇格を決めた後も「(キーマンは)全員です」と同じ言葉を挙げた。運命の第3戦前日には選手、コーチをはじめ、スタッフ、練習生らチーム全員が集まり、第3戦をどう戦うべきか話し合った。「みんなが同じボルテージで、同じ気持ちで『今日の試合を絶対に勝ちたい』という思いと、ナイナーズのバスケットをやれば勝てるという思いが統一されていた。全員が今日の勝利の一部です」。間違いなく「仙台89ERSのバスケット」がつかんだ勝利だった。

仙台に移籍した18-19シーズンから主将を務める月野雅人(33)は「(昇格まで)4年かかりました。チームがB1に戻る一員になれたことがすごくうれしい」と抱き続けた「B1昇格」達成を喜んだ。平日の月曜日午後7時から行われた第3戦には仙台から約40人のブースターが香川に駆けつけ、NHK仙台で行われたパブリックビューイングには200人が来場し、B1昇格の瞬間を見届けた。月野は「(ブースターの皆さんは)変わらずどんな時も最後まで“黄援”してくれた。そういった方たちの黄援が僕らに力を与えてくれたと思う。やっと皆さんと一緒に喜べる機会を得られてうれしく思います」と、ブースターへの思いを語った。

藤田HCを擁した今シーズンはコロナ禍の影響で延期や中止が相次いだ。沢辺圭太(27)、渡辺翔太(23)ら、けがによる主力選手の長期離脱もあった。決して順風満帆ではなかったが、そのたびにピンチを乗り越えて成長を続けた。目標に掲げた「B2優勝、B1昇格」完全達成まであと2勝。仙台は明日20日からFE名古屋とのPO決勝に挑む。【濱本神威】

■志村社長は大粒の涙

仙台89ERSの志村雄彦社長(39)と片岡大晴(36)は、16-17シーズンに仙台でプレーし、B2降格を経験した。「ずっと泣いていました。ちゃんとしないととは思ってたのですが」と当時を振り返った志村社長は、悲願の昇格決定に大粒の涙を流した。片岡は「バスケットボール人生の挑戦において悔いがないと言えるくらい大きなこと」と勝利をかみしめた。来季は6季ぶりのB1舞台。片岡は「B1というトップリーグに89ERSがいる。本当に皆さんに楽しんでほしい」とブースターにメッセージを送った。

■空港はお祝いムード一色

B1昇格から一夜明けた17日午後、チームは香川から仙台に凱旋(がいせん)した。チームが搭乗した飛行機内ではB1昇格を祝うアナウンスが流れ、仙台空港には約100人のブースターらが出迎えるなど、お祝いムード一色に包まれた。花束を受け取った月野主将は「B2優勝というもう一つの目標があるので気を引き締めて戦いたい」と決意を新たにしていた。