2020年の全日本相撲本選手権を制してアマチュア横綱に輝いた日体大相撲部の花田秀虎(3年)が6日、日刊スポーツの取材に応じ、相撲との両立をやめ、世界最高峰の米フットボールNFL挑戦に向け、アメフトに専念することを明かした。花田は「生半可な気持ちで挑戦できない。昔からの夢だった。人生を懸けてやりたい」などと語った。

3月にはアメリカンフットボール日本社会人Xリーグが開催した合同トライアルに参加して話題を呼んだ。相撲との「二刀流」を掲げていたが、同部の齋藤一雄監督と話し合い、アメフトに専念することを決意した。同部には在籍しつつ、事実上の休部状態で相撲の稽古はいったんやめる。「インカレも近いのに、僕のわがままを聞いてくれた齋藤監督や仲間には感謝しています」と話した。

3週間ほど前から相撲部の練習には参加せず、本格的にアメフトの練習を開始したという。Xリーグで昨季日本一となった富士通の練習に週3日参加したり、法大や東大のアメフト部の練習にも参加。また、元アメフト選手の河口正史氏からトレーニング指導を受け、渡米を見据えて英会話学習にも励んでいる。

相撲部の寮も離れ、都内のマンションで1人暮らしを開始。花田は「苦渋の決断だったけど、挑戦しなかったら、死ぬ前に後悔すると思った」と語った。

NFLでは20代前半で活躍している選手が多いとし、今年21歳になる花田は「本格的にやらないと間に合わない。ただの夢で終わってしまう。22歳で大学を卒業してからでは遅い」と、このタイミングでのアメフト専念の理由を明かした。

相撲では、7月に米アラバマ州で行われたワールドゲームズで重量級で金メダルを獲得した。その際、大学フットボールの強豪アラバマ大の練習などを見学した。「僕と同じ大学生が、こんなすごい施設でトレーニングしているんだなと。ちょっと(日本と)違った。スケールに圧倒されました」。本場の熱量に圧倒されたことも、アメフト専念へのきっかけとなった。

NFL挑戦へ懸ける思いは強い。現在は、NFLの選手育成システム「IPPプログラム」への参加を目指す。同プログラムは、北米以外の国から広く人材を求めようとするNFLの海外戦略の1つ。約10週間、米フロリダ州でトレーニングが行われ、NFLのスカウトの目に留まれば、NFLのチームとFA契約を結んだりすることができる仕組みだ。

10月3、4日に英ロンドンで行われる、「IPPプログラム」の参加者を選抜する「インターナショナルコンバイン」に参加予定だった。しかし、参加資格年齢が21歳以上で、10月30日に21歳となる花田は受けられなかった。「今回は駄目でしたけど、1年後に向けて、トレーニングできる期間ができたと思ってやっていきたい」と前向きだった。

将来的には角界入りも期待されていた。現時点では、「相撲で応援してくれた方々の期待を裏切ってしまった」と話すが、「でも、後悔はしたくなかった。応援してくれた方々の思いも背負ってアメフトに挑戦したい」と意気込む。

アメフトの練習やトレーニング、英会話学習など、課題は山積み。それでも「大変ですけど、今はそれがめちゃくちゃ楽しいです。やりたいことだったので突き詰めたい」。日本人初のNFL選手へ-。アマ横綱の新たな、本格的挑戦が始まった。【佐々木隆史】 

◆花田秀虎(はなだ・ひでとら)2001年(平13)10月30日、和歌山市出身。小学2年時に地元のわんぱく相撲大会に出場して優勝し「和歌山市少年相撲教室」に通う。和歌山商高では1年時に全国高校選抜大会個人戦で優勝。2、3年時には世界ジュニア選手権の無差別級で2連覇。日体大進学後、20年の全日本選手権で優勝し「アマチュア横綱」に。大学1年の優勝は84年の久嶋啓太(元前頭久島海)以来36年ぶり2人目の快挙。185センチ、135キロ。

◆他競技からのアメフト転向 大相撲の66代横綱若乃花の花田虎上氏が、日本相撲協会退職後の01年にXリーグ、オンワードスカイラークスに入団した。21年には、元プロ野球DeNAの石川雄洋内野手がノジマ相模原ライズ、田村丈投手がイコールワン福岡サンズにワイドレシーバーとして加入。なお、NFL選手となった日本選手はいない。