震災を思う-。東日本大震災から12年。最大震度7を観測した宮城県を拠点とするB1仙台89ERSに今季加入したネイサン・ブース(29)は、トルコ1部リーグのサカリヤBBで17-18年、ダルサファカで昨シーズン、プレーした。2月6日、トルコ南東部を震源とする「トルコ・シリア地震」が発生。2シーズンを過ごしたトルコの惨状に胸を痛めている。ブースに震災被害に遭ったトルコ、仙台への思いについて聞いた。

   ◇   ◇   ◇

ブースは、日本に来るまで地震を経験したことはなかった。東日本大震災については「映像を少しだけ見たことがある。津波でビルが倒れているのを見ました」。仙台移籍が決まり、ネットで「仙台」と検索したところ、一番上に「東日本大震災」が出てきたことは記憶に残っている。だが、仙台に来てからも震災について深く知る機会はなかった。

2月6日、「トルコ・シリア地震」が発生。サカリヤBBのあるサカリヤ県やダルサファカのあるイスタンブールはトルコ北西部にあり、被害に遭ったトルコ南東部とはかなり離れているが、「シリアの国境近くにある『ガズィアンテプ』というチームと対戦するために訪れたことがあります。その地域は『バグラヴァ』というデザートの発祥地として有名」であり、なじみのある地だった。地震発生を知り、「トルコでプレーしていたときに、家族ぐるみで非常に仲良くなったチームメートがいる。彼らの家族に何が起きたというわけではないが、彼らの友達や知り合いが影響を受けた。非常に悲しい気持ちになりました」。奥さん同士も非常に仲が良く、「奥さんがいくつかの支援団体に寄付しています」。自身も、8日のA東京戦の試合後に募金箱を手にし、ブースターに「トルコ・シリア地震」支援のための募金を呼びかけた。募金は17万6582円が集まり、募金した方の中には「12年前に助けてもらったから」という人もいた。「そういった思いは本当に大きいこと。仙台で震災を経験した方々が『助け合いたい』という気持ちを持って、募金していただけるのを見て、世界が1つにつながっていることを実感します」と、感慨深い表情で話した。

11日には仙台市若林区にある荒浜海岸で黙とうを行った。黙とう後には震災遺構の荒浜小学校を見学し、東日本大震災にじかに触れた。「今回のトルコの地震や仙台という大きな震災を経験したチームでプレーすることを経て、自分としてはもっともっと地域のために、地域を盛り上げるためにプレーするということを頭の中に入れないといけない」。“このまちのために闘う”という仙台89ERSの信念がブースに刻み込まれた。今季は残り21試合。地域のために奮起し、バスケットボールを通して明日への活力を届ける。【濱本神威】

◆ネイサン・ブース 1994年2月3日生まれ、米国出身。16年、イタリアでプロデビューし、21-22年シーズンはトルコ1部リーグ・ダルサファカでプレーし、今季仙台加入。ポジションはPF(パワーフォワード)。208センチ、106キロ。