2年連続出場の村元哉中(30)高橋大輔(37)組(関大KFSC)が、72.92点で11位発進した。

高橋は序盤にミスがありながら、アイスダンス転向3季目の精神的成長でカバー。来年大会で日本勢初の「2枠」を手にできる、10位以内を射程に捉えた。今日26日のフリーダンス「オペラ座の怪人」で偉業に挑む。

2人で回転しながらターンするツイズルの途中で、高橋の頭に疑問が浮かんだ。「いま、何回転だっけ…、やばい…」。片足を上げて高速で回る中でカウントを数え損なった。隣の村元を見れば、「もう終わりに入ってる」。動きは止められない。頭はスローモーションで多々考えがよぎったが、1回転多くなり、シンクロが途切れた。

緊張感ゆえのミスも、ただ、その後が強さだった。「1年目だったら相当焦って、最後まで引きずっていたかも」。続く、体勢を変えてのツイズルではもう、最初から最後まで2人の動きをぴたっと合わせた。難度も最高のレベル4を獲得。シングルから転向3季目の経験値だった。

ハイテンポのラテン曲に会場からは大きな拍手、さらに久々の声を出しての応援も受けた。高橋が「お客さんのワーッという盛り上がりで、結構、今回はヘルプされました」と言えば、村元も「最後のエネルギーをもらった」と中盤以降にヒートアップしたスタンドからの熱量を力に変えた。

10位とは2・32点差。フリーで1つ順位を上げれば、62年に竹内己喜男、金子恵似子が初出場後、ずっと1枠だった日本の出場枠に、初の「2」が刻まれる。「かなだい」がカンフル剤となって、盛り上がる国内アイスダンス界に、大きな贈り物になる。昨年は枠を意識し過ぎた反省から、今年は演技に集中。高橋は「結果としてそうなればうれしい。金メダルを取るぐらい大変なこと。本当に目標です」と見据えた。

そのフリー。演目は日本男子シングル最高位(当時)の銀メダルを獲得した07年大会で、高橋が演じた「オペラ座の怪人」。16年後、同じ母国開催に、「その時の僕自身は今の自分を想像できていなかったでしょう」と感慨も深い。

2人で演じてきたプログラムの完成形への自信を問われると、力強い即答ののち、ほほ笑んだ。それは、ずっと日本男子の開拓者だった37歳の言葉だった。「あります! 言霊です(笑い)」。【阿部健吾】

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