フィギュアスケートのアイスダンスで「かなだい」として活躍した村元哉中(30)高橋大輔(37)組(関大KFSC)が2日、都内ホテルで「現役引退発表会見」を開いた。

日本スケート連盟の規定上「2度目の引退」後は再び競技会に復帰できないことについて、高橋は「スッキリ。自分で自分を褒めてあげたい。やり切った」と晴れ渡った表情を見せた。

--この先、もう復帰できない

高橋 シングルの引退の時、世界選手権に出場する予定が負傷で難しくて、そのまま出場ができず、フェードアウトじゃないですけど、そのまま引退となってしまって。スッキリしなかったというか。シングルで引退する後半2年間なんかは、本当に自信をなくして、スケートをすること自体も嫌な気持ちでの引退だったので。それに比べると今回の引退は、現役復帰した時から「自分はスケートを軸にやっていくために復帰したんだ」というスタートで、次にやりたいことも明確にありますし、1度引退したからこそ、心の準備も感じられたし「こうした方がいいんだろうな」と自分でも分かりながらだったので、全部の準備ができている状態で引退できたので。2回目は戻れないんですけど、もう大丈夫かなと(笑い)。十分やり切ったかな~って(笑い)。もうペアはできないとさすがに思っているので、自分の中では、やり切れたかなと思っています。

高橋は、シングルも含めた現役復帰後の上積みも実感。ポジティブに変化した性格を自己紹介した。

--高橋選手へ。まずシングル復帰にチャレンジしたことでアイスダンスにつながった。計5年間の上積み、得られたものは。村元選手へ。18年平昌オリンピック(五輪)後に「どうしようか」と悩んだ時期があったが、高橋選手に出会えたことで継続できた。ここまでに得られたことは

高橋 さっきの質問とかぶっちゃうかもしれないんですけど、本当にこのアイスダンスをやってなかったら、こんなにスッキリして気持ちで引退できてなかったんだろうなと。あのまま引退して、現役復帰しなければ、こんな気持ちになることはなかったですし。これは哉中ちゃんが誘ってくれたからこそ、こういう気持ちになれているので、本当にすごく感謝していて。競技復帰してからの自分が本当に好きで。それまでの自分っていうのは、本当に自分に自信が持てず、現役やってた時も、自分を褒めることもできなくて「まだまだ全然できない」だったところが、競技復帰してからは、ちょっとでもできることがあれば「よくできたな」って自分を褒めてあげることができるようになったし、よりいっそう、できない自分を受け入れられるようにもなりましたし。ちょっとしたことでも自分を褒めてあげると、やる気が出るというか。すごく前向きになっていく自分が、やっぱ出てきたので。それはホントこの経験をしなければ、もっと自分を責めたままで終わってたんだろうなと感じるので。現役復帰を決断して大変なこともたくさんあったんですけど、あったからこそ、毎日大変なことも絶対自分のプラスになるなとか。全部ホント、これから生きていく上で「何があっても大丈夫かな」みたいな感じの気持ちになれたかなっていう風に思うので。なので何かができるようになったというより、自分自身で自分を褒めてあげて、どれだけ豊かに生きていくか、がちゃんとできるようになったというところかなと思います。

村元 そうですね。本当に最初「大ちゃんに声かけていいのかな」から始まったんですけど、現役復帰して戻ってきたのに「アイスダンスで声をかけていいものか」いろいろ葛藤があって、声をかけた後も「え、大丈夫かな」「でも声かけちゃったし、やるしかないな」みたいな。でもホント今となっては「勇気を出して声をかけて良かったな」と思いますし、この3シーズン、大ちゃんと一緒に練習して、いろんなものを見せることの大切さ、あらためて教えていただいたというか。大ちゃんを通して、自分がどのようなスケーターなのか感じられました。あと、確か今季のNHK杯だったと思うんですけど、リズムダンスってすごい複雑なステップがある中、ある方から「もっとエレメンツとエレメンツの間のトランジションをもうちょっと簡単にして、後半もっと得点を上げられるように変えてみたら」って意見があって、まあ大ちゃんに「どう思う?」って聞いてみたら「得点とかより、作品として妥協するのは良くないんじゃない?」とバサッと言われたことがあって、そこが私と考えていたことが一致して、もちろん競技としては結果を残していくことも大事なんですけど、それ以上に1つの作品、記憶に残る演技をしたい思いが強かったので、すごい一致して「そうだよね」ってなって、いかに、お客さんや世界に感動を与えることが大事か感じられたので、この3年間で見せることの大切さを大ちゃんから、すごい教わりました。

2人は結成3季目の22-23年シーズンを持って「競技生活から引退」(高橋)することを、前日1日に発表。村元が「2人でいろいろ話し合って決めたことなんですけど、明日、記者会見を開きます」と話していた通りの会見を「囲み」形式で実施した。【松本航】