来年のパリ五輪出場を決めていた男子日本代表(世界ランキング4位)が2位で大会を終えた。同じく7日に五輪出場権を獲得した米国(同2位)との最終戦で2-3で競り負けて5勝2敗の2位となった。米国は7戦全勝で1位。スタメンには、来年の本番を見据えながら、今大会はベンチからチームを支えてきたメンバーを起用。常に前向きな姿勢と言葉で、フィリップ・ブラン監督(63)は“一丸”の礎を作り上げた。フランス出身の指揮官が、目標の母国の都パリでの決勝へ、日本を導いていく。

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最後に米国に競り負けたが、パリ五輪切符獲得とともに、収穫の多い9日間だった。ブラン監督は試合後の会見で「自分の中での基準や自信をなくすようなことは命取りになる。今回得られた経験を来年の五輪に生かしたい」と誓った。

まさかの黒星から4戦連続ストレート勝ちでパリ切符をつかんだ7日のスロベニア戦後。試合中に見せる険しい表情を崩し、穏やかな笑みをたたえながら言った。「夢をつかんだ。素晴らしいバレーボールを見せられた」。ともに戦ってきた仲間たちを誇った。指揮官の前向きな言葉が、いつも選手たちの背中をぐっと押してきた。初戦フィンランド戦は2セット連取からフルセットに持ち込まれ、第2戦のエジプト戦では同じ展開から逆転負け。それでも、「我々は常に勝敗から学んでいる」と良薬に転じさせ、前だけを見させた。エジプト戦翌日には個々に考えさせるべく、選手だけのミーティングの実施を促した。

1人1人に真摯(しんし)に寄り添い、一丸の土台を作り上げた。4日のトルコ戦後には、バックアタックの決定率が悪かった西田を呼んだ。「どんなトスが打ちやすいのか?」「もっとこうした方がよくなるんじゃないか?」。セッター関田とともに動画を見ながら意見を交わした。話し合いながら改善を探る指導に、西田は「身近に寄り添って見てくれる。プラスに考えさせてくれる」と勇気づけられた。

石川も「選手を信頼してくれている監督。1本に対して厳しいが、僕たちならやってくれると思っているからこそ」と言う。そして関田も「必要なことを教えてくれる。それをやれば世界のトップのセッターになれると信じられる」。

そのまなざしは主力だけではなく、出場機会が限られる選手にもしっかり向けられていた。20歳の甲斐には「まずは楽しめばいい」と説き、局面でリリーフサーバーを託し続けた。甲斐はその言葉を信じ「何か1つでも印象を残したい」と迷いなく腕を振った。

昨年、OP宮浦を視察するため、ポーランドまで足を運んだ。チームになじめずにいた男は「もっとガンガンいけ」とハッパをかけられ「遠慮せずにいけるようになった」と感謝。西田の不調時にチームを支える存在に成長し、この日も両軍トップの27得点でけん引した。

指揮官は「目標は五輪で決勝進出。その資格があることを証明できた」と力を込める。パリの大舞台へ-。「強い」日本を、その言葉で押し上げていく。【勝部晃多】