【北京=藤塚大輔】ショートプログラム(SP)2位発進の宇野昌磨(25=トヨタ自動車)は、フリーで今季自己ベストの191・32点、合計297・34点で2位となった。

暫定首位に立った後、SP首位のイリア・マリニン(19=米国)が今季世界最高となる207・76点をマークし、合計314・66点で初優勝した。

それでも、すべきことは果たした自負がある。試合後は、一定の満足感があった。

「(ステファン・ランビエル)コーチもすごく喜んでいて、姿勢が一番うれしいと言っていただけて。点数とか細かいところを狙うことも大事になってくると思うんですけれども、まずは自分の一番身近な人たちにどう納得してもらえるか、満足してもらえるかを一番大切にしたいと今季は思っているので、そこはうれしかったなと思います」

2日前のSP後には、苦笑いしながら素直な感情を口にしていた。

「レベル高すぎて無理です。やってられないです」

17日で26歳。GPファイナルはシニア1年目だった15年に初出場し、もう8年がたった。シリーズ2戦の上位6人として出場権をつかんだのは7度目(21年は新型コロナ禍で中止)。世界選手権2連覇の王者は、後輩に追われる立場となったが、決してスタンスを崩さない。

「フィギュアスケートっていうものは対人スポーツとは違うので、相手の嫌がることをするスポーツとはまた違って、己とずっと戦い続けるものです。ライバルであり、どちらかというと仲間だと、僕は思っています」

その中で今季、注力しているのは表現面だった。一方で、かねて自身が背中を追ってき羽生結弦、ネーサン・チェン(米国)の名を挙げ、同じように後輩の“壁”となることも望んできた。SP後に言った。

「『今回は負けちゃった』『次は勝ちたい』。それを直接相手に言えるぐらいの意識で、このスポーツに取り組みたいと思っています。今、出ている6人は全員そういうメンタルの持ち主だと思っているので、すごく居心地がいいですね」

GPファイナル連覇こそ逃したが、表情に曇りはなく、笑顔で振り返った。次の舞台は2連覇が懸かる全日本選手権(20~24日、長野)。世界をけん引する日本男子のリーダーとして、自らのスタイルで進んでいく。