盛岡の「桜」が、全国で咲き誇る。全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)は4日、東京体育館で開幕する。

女子の盛岡誠桜(岩手)は同日、全国高校総体8強の鹿児島女と対戦。柿木唯那主将(3年)が1年生の多いチームを引っ張り、家族や村田基(はじめ)監督(36)に「勝利」での恩返しを誓った。郡山女大付(福島)OGで、Vリーグ2部(V2)女子のリガーレ仙台・佐藤麗奈(23)は高校時代を振り返るとともに、5大会ぶりの初戦突破を狙う後輩にエールを送った。

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2大会連続ストレート負けの盛岡誠桜が「三度目の正直」を果たす。1年から主力の柿木は「(引退の)寂しさはある。3年間長いなと思ったけど、本当にあっという間だった。残りの期間を大事にしたい」と最善の準備を誓った。雫石中3年の20年はコロナ禍で全中が中止になり、悔しさを糧に岩手の強豪校に進学。3大会ぶりとなる初戦突破の原動力になる。

エースとして新チームを託され、主将となったが、自ら立候補した訳ではなかった。遠征などで得点を決められず、「あまりチームを引っ張る感じではなかった。『責任を持ってチームを引っ張るように』ということで、キャプテンになった」と就任の経緯を明かし、村田監督は「もう1つ、2つ殻を破ってもらいたい。先輩がいた時はおんぶに抱っこという感じだったが、(最終学年で)いろいろな責任を持った時に、選手として変わってほしかった」と意図を説明した。

不安はあったが“先輩”に背中を押された。母彩さんは盛岡女時代に主将を務め、県大会優勝を経験。主将就任を伝えた時、覚悟を決めた。「『やるしかない』と。最初はダメだしされたけど、『自分がキャプテンになったから、自分のチームだよ』と言われた。しっかり責任を持とうと思った」。新体制で臨んだ5月の県総体で優勝。6年ぶりの全国高校総体出場に導き、自信もついた。

最後の大会にかける3年生は8人。いつも応援してくれる家族が見守る中、いまだ果たしていない1勝をつかみにいく。「3年間やってきたことを大会を通して見てもらっているので、全部出し切りたい。自分がチームを引っ張って勝つ姿を見せたい」。笑顔の桜をオレンジコートに咲かせる。

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郡山女大付は東北6県で最も遅く行われた福島予選を制し、8大会連続25度目の出場。佐藤が1年時の17年から優勝しており、「連覇を途切らせず、春高に出場していることは自分も誇らしい。後輩が気持ちを前面に出してやっている結果だと思うので、『すごい』が率直な思い」と後輩の活躍を喜んだ。

佐藤は福島市出身。春高予選が同市内の体育館で行われ、中学時代に先輩のプレーや競技に対する姿勢を見て「自分もやりたい」と同校進学を決意した。入学後はレベルの高さを感じ、やっていけるのか不安があったというが、「先輩方はすごく優しくて『自主練習をしたい』と言うとつき合ってくれた。(佐藤浩明)監督は経験豊富な方なので、先輩と監督に必死についていった」と振り返った。

濃厚な3年間で、忘れられない言葉がある。2年の冬、左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、半年以上のリハビリ生活を送った。チームは県新人準優勝、全国高校総体出場も逃した。ケガのため、練習で何もできない自分に対し、佐藤監督から「継続だけが力なり」という言葉をかけられたという。「継続だけが自分の力になる。その言葉を頭に入れてリハビリを頑張った」。

負けたら引退の同予選で復帰。優勝の瞬間は「頑張ったことが報われた」と涙があふれた。年明けの全国大会は初戦を突破したものの、下北沢成徳(東京)に敗戦。「3年生にとっては最後。どうしても勝ちたい思いもあり、ケガからの復帰もあって初戦突破はすごくうれしかった」。

同校は福島の女王として長く君臨するが、春高では4大会連続初戦敗退中。「オレンジコートは高校生にとって特別な舞台。『勝つ』だけにこだわらず、今まで自分たちがやってきたプレーを出せれば、おのずと勝利は見えてくる」と、後輩にエールを送った。【相沢孔志】