【モントリオール(カナダ)=阿部健吾】坂本花織(23=シスメックス)が56年ぶりの3連覇を達成した。ショートプログラム(SP)4位から3・69点差を大逆転。フリー149・67点の合計222・96点とし、SP首位だった欧州女王ルナ・ヘンドリックス(ベルギー)を上回った。残り3人の時点でトップに立ち、そのまま日本女子初の快挙にも到達した。

場内の優勝インタビュー。マイクが入ってるかチェックでたたくと、大きな音が出てビックリ。その姿に場内から爆笑されつつ、万感の思いを込めた。

「ショート4位で少しは焦ったんですけど、いい緊張感の中で1つ1つ集中してできたので、この結果をすごくうれしいなと受け止めています。精いっぱい頑張ります。ありがとうございました」

女王の意地だった。意識が強すぎた3回転ルッツこそ、ややGOE(出来栄え点)マイナスだったものの、代名詞のダブルアクセル(2回転半)など美しく。3回転フリップも決めた。最後のスピンから場内はスタンディング・オベーション。中野園子コーチも思わずガッツポーズする会心の出来だった。

ショートプログラム(SP)では「練習通り」に苦しんだ。2本目の3回転ルッツ。踏み切る左足のエッジを傾ける角度で種類が違うルッツ(外向き)とフリップ(内向き)。どちらかが良ければ、片方は悪いという感触が続いていたが「それがもろに出た」と着氷が乱れた。

それでも、転倒や回転不足にならず回り切った踏ん張りはさすがで、大幅な減点は避けて、このフリーに望みをつないでいた。

2連覇を果たした昨季。「『終わり良ければよければ全てよし』みたいな感じで、去年は終わって」と振り返る。シーズン前半はモチベーションが高まらずに苦しみ、後半にようやく盛り返した、そんな1年だった。

「やっぱ満足できない」

そう感じ、シーズンオフにも状態、体重をキープした。アイスショーに出演する間も練習を頑張り、連続3回転ジャンプが跳べる状態を維持。SP、フリーも曲をかけて磨いていった。

「いいスタートダッシュを切りたい」。期して迎えた今季、国際大会は全勝。世界女王として、満足感を求めた末に、再びの頂点にたどり着いた。

◆演技直後の一問一答

―いかがでしたか

疲れました(笑い)。

―精神状態は

割と今日の緊張感の方が やりやすい感じ。でも、これぞ試合だなっていう緊張感で、 すごくいい状態で挑めたかなって思います。

―滑り出しで少しつまずいた

いや、あれはマジで怖かったです。もう心臓に悪い(笑い)。今まで練習でもあんなんなったことなかったので、本当、試合って何が起こるかわかんないなって思いました。

―切り替えた

そうですね。何か割と最初、アクセルちゃんと跳べればいけるかなって思って、アクセルを降りて、すごいいつもの流れだったので、これはいけるなっていう感じになりました。

―つまずいても、やり続けられた理由は

やっぱり練習を積んできた量かなって思います。

◆世界選手権女子の連覇 ソニア・ヘニー(ノルウェー)の10連覇(1927~36年)が最長。五輪でも女子唯一の3連覇を遂げている。5連覇はヘルマ・サボー(オーストリア=1922~26年)キャロル・ヘイス(米国=1956~60年)。4連覇はクロンベルガー・リリー(ハンガリー=1908~11年)。3連覇にはメーライホルバート・ジョーフィア(ハンガリー=1912~14年)ショーケ・ディクストラ(オランダ=1962~64年)ペギー・フレミング(米国=1966~68年)がおり、坂本は56年ぶり3人目で日本勢初。3連覇以上では8人目に名を刻んだ。通算3度目の優勝は浅田真央に並び日本勢で最多となった。

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