【日刊スポーツ05年12月18日付東京版最終版】<フィギュアスケート:GPファイナル>◇2日目◇17日◇東京・代々木第1体育館

 15歳の天才少女が、ついに世界の頂点に立った。浅田真央(グランプリ東海ク)が、ショートプログラム(SP)に続き、フリーでも自己ベストを更新する125・24点をマーク。今季無敗だった女王スルツカヤをおさえ、合計189・62点の自己最高記録で完全優勝を遂げた。しかし、国際スケート連盟(ISU)のチンクアンタ会長が、年齢制限で五輪出場資格のない浅田に対し、特例措置を適用しないことを明言。トリノ五輪への夢を絶たれた浅田だが、五輪前に世界一の実力をアピールした。

 158センチ、38キロの小さな体が、誰よりも大きく見えた。横に女王スルツカヤを従え、表彰台の真ん中に、浅田が立った。「今日は100点満点です」。トリノへの道は閉ざされたが、15歳の天才少女は、この日、氷上で誰よりも輝いた。GPシリーズ初参戦の今年、わずか3戦目。今年11月のGPフランス杯でも優勝しているが、今回は、世界のトップ6が集うグレードの高い大会。優勝の意味が違う。文字通り世界の頂点に立った。

 得点が出た瞬間、1万人を超えた超満員の観客がどよめいた。189・62点の高得点に、浅田の名前の横には「1」の数字がきれいに輝いた。君が代が流れ、スポットの真ん中に浅田がいた。しかし快挙にも「スルツカヤに勝てるとは全然思わなかった」と、あっけらかんと笑った。

 ジュニアの世界タイトルを総なめにした浅田も、さすがにこの日は緊張した。世界で初めて2度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶことを明言していたが、滑走直前に止めた。「名古屋での練習では1度も成功していなかった。少し不安になった」。トリプルアクセルは、最初の1度だけ。それを見事に成功させ、秘策を封印しても、SPで5・48点だったスルツカヤとの差を、8・14点差まで開く圧勝だった。

 機械のように正確無比で、高いジャンプが、浅田の最大の武器だ。「すべてのジャンプが決まったのがうれしい」。演技後半は、ジャンプで着氷すると、勝利を確信したように何度もガッツポーズを繰り出した。11度のジャンプはすべて成功。この日はくるみ割り人形を演じるため、母と相談し、バレエのように髪をアップに束ねた。技術だけでなく、表現力を示す5項目も、この日はすべて7点台の高得点を記録した。

 快挙にも、トリノ五輪への道は、この日、完全に閉ざされた。過去には、92年アルベールビル五輪銀メダルの伊藤みどりさんが、14歳で84年サラエボ五輪出場を目指し、最後の選考大会で結果が出せず、夢がかなわなかったことがある。その時のコーチが、今の浅田の山田満知子コーチだ。その山田コーチが、育てた文句なしの世界一。トリノへの夢はかなわなかったが、浅田はまっすぐ前を向いた。「バンクーバーに出られればいい」。その未来には、十分に金メダルが輝いている。【吉松忠弘】