中国出身で女子バスケットボールのシャンソン化粧品のC(センター)杉山美由希(18)が日本バスケットボール協会から選手登録を取り消された件で、日本オリンピック委員会(JOC)に異議申し立てを行った。JOC関係者が5日、明かした。日本国籍を取得したことで、いったんは登録を認められながら、昨年7月に国際連盟のルールを理由に取り消された。いまだに解決のめどが立たず、立場も宙に浮いた状態が続く。JOCに対して、問題の解決と、日本協会への指導を訴えた。

 柔道選手に続き、今度はバスケットボールの選手がJOCに助けを求めた。昨年7月、日本協会から選手登録を取り消された杉山は代理人を通してJOCに文書を提出。登録問題の早期解決、JOCによる日本協会への指導を訴えた。JOC関係者は「JOCに訴えたのは、心身の限界が近づいたことが大きいようです」と明かした。

 昨年7月、日本協会から選手登録を取り消された。18歳未満の海外移籍を禁止する国際バスケットボール連盟(FIBA)ルールに抵触すると判断された。現在、Wリーグでは日本国籍取得申請中の選手もプレー可能。日本国籍を取得した杉山の場合、国内の規則上では取り消しの理由は見当たらないが、プレーはもちろん、ベンチ入りすらかなわなくなった。

 杉山の取り消し問題は、一部から人権侵害との声も上がるなど、日本協会内でも賛否両論が渦巻く。日本協会関係者によると、杉山と養子縁組を結んで養父となったシャンソン化粧品の杉山明宏部長は、この件に関して、日本協会の高橋雅弘・女子強化部長から名誉毀損(きそん)されたとして昨年刑事告訴したという。問題は日本協会を超えて広がりつつある。

 登録の取り消しから約8カ月経過しても日本協会内で解決のめどは立たない。杉山は事態打開へ、JOCへの異議申し立てと同時に、JOCを管轄する文科省への訴えも進める。大好きな日本に、人生を懸けて来日しながらいまだに、いつコートに立てるか分からない。JOC関係者は「本人はこのまま一生プレーできないのではと悩んでいる」と話す。五輪招致のテーマは「選手第一」。賛否両論があるとはいえ、まずは精神的に追い詰められた18歳本人を救わなければならない。

 ◆杉山美由希(すぎやま・みゆき)1994年(平6)6月1日、中国吉林省長春市生まれ。10歳でバスケットボールを始める。10年7月、中国代表としてU-17世界選手権出場。北京の体育専門学校在学中にシャンソンのスタッフにスカウトされた。10年10月に来日。アニメの「ワンピース」などで日本に興味を持っており日本国籍取得を望んだ。11年1月にチームの杉山明宏部長の養女になり、昨年4月に日本国籍を取得した。中国名は李明陽。196センチ、70キロ。

 ◆FIBAルール年齢制限

 選手が18歳の誕生日を迎えるまでは、その選手の国家間移籍は認められない。ただし、加盟国協会および、必要な場合はクラブおよび選手本人と協議した上で、FIBA事務総長が決定する特別な場合を除く。FIBA事務総長は、その移籍が、所属クラブが適切な練習を提供するなどの諸条件(略)に該当するかどうか決定するため、必要と思われるいかなる書類も要求することができる。

 [2013年3月6日9時1分

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