ラグビー・トップリーグの東芝が再び、激震に見舞われた。トンガ出身の日本代表WTBクリスチャン・ロアマヌ(22)が、1月の日本アンチ・ドーピング機構(JADA)による検査で、A検体から大麻に含まれる化学物質が検出されたことが5日、分かった。ロアマヌは暫定資格停止処分を受け、8日のプレーオフ決勝には出場できない。B検体の再検査で陽性反応を示した場合、東芝は日本選手権出場を辞退することを表明した。外国人所属選手の窃盗事件に続くダブルパンチで、名門が窮地に立たされた。

 ロアマヌは61-5で大勝した1月12日のサントリー戦後、検査を受けた。分析の結果、大麻に含まれる化学物質カンナビノイドという禁止物質が検出された。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は今月3日、文書で通達。ロアマヌは会社に報告した。日本ラグビー協会の話では、86年のドーピング検査導入後、陽性反応が出た例は初めてという。

 また警視庁はこの日夜、大麻取締法違反の疑いで、東京都府中市のロアマヌの自宅や東芝のクラブハウスや自宅を家宅捜索したが、大麻などは見つからず、押収物はなかった。

 現在ロアマヌは部活動を自粛しており、禁止物質の摂取について「心当たりがない」と話している。A検体の検査では摂取の事実が確定せず、再検査の結果を待つ。結果はプレーオフ決勝(8日)と日本選手権の初戦(22日)の間に判明する見込み。東芝は、再検査で陽性反応が認められ、ロアマヌの資格停止処分が確定した場合は、部として日本選手権を辞退すると表明した。

 前日4日に監督代行らスタッフ、選手全53人が顧問弁護士による大麻吸引有無のヒアリングを受けた。近く、チーム全員を対象に尿検査が行われることになる。座古隆教ラグビー部副部長は「みなさまにご迷惑をかけたことをおわびします」と謝罪。ロアマヌと話した和田賢一監督代行は「かなりショックを受けている様子だった。絶対あってはならないこと。彼を信じている」と話した。

 東芝は、先月4日に外国人所属選手が窃盗容疑で逮捕されたばかり。この選手とロアマヌはともに今季から加入した選手で、管理責任を問われる事態となった。東芝は外国人選手に対し、専門家を招いて禁止薬物についての講義を毎年行っていたという。

 チームは窃盗事件直後、「今季はもうプレーできないかもしれない」と1度は出場辞退を覚悟した。広瀬主将は「僕たちのラグビーで認められる集団であることを示したい。もう1度、信頼できるようなチームに」と沈痛な表情で語った。日本選手権優勝6度、トップリーグ王者3度の東芝が逆風にさらされた。