<2003年1月18日付日刊スポーツ紙面から>

 大相撲の大関朝青龍(22=高砂)が結婚したことが7日、分かった。母国モンゴルで中学時代から交際していた同い年のタミル・ゴンブトゥレンさん(22)と昨年12月30日、モンゴル大使館に婚姻届を提出。ドイツ留学していたタミルさんとの遠距離恋愛を実らせてゴールインした。都内のマンションで新婚生活をスタートさせ、4月には第1子も誕生する。朝青龍は10日に都内のホテルで会見、新妻の応援を励みに12日に初日を迎える初場所(東京・両国国技館)で綱とりに初挑戦する。

 朝青龍が綱とりより一足早く、いちずな恋愛を実らせた。中学時代から交際していたタミルさんと、昨年末にモンゴル大使館に婚姻届を提出。師匠の高砂親方(元大関朝潮)夫妻にも報告し、新年早々から新婚生活をスタートさせた。番付を一気に駆け上がった猛スピードの出世同様に、プライベートでも早熟ぶりを発揮。比較的早婚の母国にならって、22歳同士で結婚した。朝青龍は「一緒にいると落ち着く」と、かけがえのない人生のパートナーを得たことを喜んだ。

 相手のタミルさんは、ドイツ留学の経験もある才えんで、父親は母国で多くの企業を経営している資産家。朝青龍はモンゴル第54中の同級生で、バスケットボール部で活躍するタミルさんにぞっこんだった。クラスメートがはやしたてるほどの仲だったが、朝青龍が同中6年の97年に高知・明徳義塾高に相撲留学して離ればなれに。タミルさんも99年にドイツへ留学した。

 しかし、2人の赤い糸は切れなかった。長距離恋愛は続いた。2年前から、タミルさんが大相撲入りした朝青龍を励ますため定期的に来日するようになり、スピード出世を果たした昨年、結婚を決めた。4月には愛の結晶の第1子が誕生する。朝青龍は「男の子だったら日本で相撲を取らせて、初の親子同時関取だ」と早婚の「特権」で笑った。高砂親方は「家庭を持って、さらに責任が出てくる。それをしっかり自覚して精進してほしい」と、若い2人にエールを送った。

 注目の綱とり初挑戦を前に、周囲を驚かせるスピード結婚。初場所の取組編成会議のある10日にも、都内で会見を開き、うれしい報告をする。その2日後には初日を迎える。気持ちを切り替えて、綱とりに挑戦する。すでに、3日のけいこ始めでは「今年はいろいろな面で、いい年になりますように」と祈っていた。

 朝青龍は前相撲から所要22場所のスピード記録で大関昇進を果たすなど、次々と出世の最速記録を塗り替えてきた。次に狙うのは前相撲から所要25場所での横綱昇進。タミルさんはモンゴル風ピロシキなど、モンゴル料理の腕も抜群だ。妊娠中だが、家庭での食事管理を徹底して、大事な場所に臨む朝青龍を支える。朝青龍はこの日、風邪ぎみの状態を考えて朝げいこを休んだ。体調を整え、今日9日のけいこ総見では、勢いをたっぷりアピールするつもりだ。家族ができて責任感を増した朝青龍が、今度は綱とりを成就させる。

 おかみさんは、温かい目で2人の結婚を見守っている。朝青龍の師匠高砂親方(47=元大関朝潮)の恵夫人(39)は「もう1人、世話をする人が増えるなあ」とやさしい口調で話した。母国を離れて、99年初場所で初土俵を踏んだ朝青龍の母親代わりを努めてきた。体重が増えない悩みなども聞いた。01年の正月には家族の初詣でに、朝青龍も同行させた。昨年12月に結婚を聞いて「2人とも若いし不安を感じた」という。

 恵夫人は86年1月、現役だった高砂親方と見合い結婚した。何も知らない世界から角界に飛び込んだだけに驚きの連続だった。「付け人が10人もいるし、びんつけ油のにおいで気持ち悪くなったこともある」。真冬にまわし一枚で歩く力士の姿に目を丸くした。

 当初は慣れるのに10年かかると覚悟したという。しかし「5年もすれば思っていることがわかるようになった。角界のしきたりも周囲の人に支えられて、徐々に慣れればいい」。

 朝青龍夫妻は今後、部屋の近くに同居する予定だという。おかみさんはサポートは惜しまないが「まず日本語をなるべく早く覚えてほしい。言葉が全然通じないですから」と笑った。

 ◆モンゴルの婚礼儀式

 かつては、父親が一人前になった息子のために嫁を探すのが一般的だった。花婿は結納品として馬などを送る。婚礼の儀式では花婿と花嫁が馬に乗って、2つのたき火の間を通過したり、花嫁は挙式後3日間、外で顔を見せないなどの風習がある。しかし、最近では、花婿と花嫁が互いの両親に結婚を申し込む形式も増えている。文化施設や結婚式用の宮殿などで結婚を祝う例も多い。

 22歳の朝青龍の結婚は、一般社会で見れば早婚の部類に入る。99年度の日本の平均初婚年齢は男性28・7歳、女性26・8歳(厚生省調べ)。しかし勝負の世界に身を置く力士は早く結婚する例も珍しくない。

 貴乃花は95年5月、22歳で元テレビアナウンサーの景子夫人と挙式。前年の94年九州場所後に横綱に昇進しただけに、精神的な安定に加えて食生活の面でも大きな支えになった。95年、96年は自己最多の年4度優勝を飾った。個人の健康管理が重要な相撲界だけに、食生活面などで夫人の力は大きい。家庭を持つことで生活が安定し、規則正しくなれば、より力を発揮することができる。

 朝青龍は、初の綱とりを前に横綱審議委員会から「品格」も求められている。結婚して家庭を持てば、自然と責任感が生まれ落ち着きが出てくるもの。気性の激しさで知られる朝青龍が結婚を機に心身ともに飛躍する可能性は大いにある。

 ◆朝青龍明徳(あさしょうりゅう・あきのり)本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ。1980年9月27日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。子供のころからモンゴル相撲に親しみ、97年6月に高知・明徳義塾高に相撲留学。99年初場所で初土俵。昨年名古屋場所後に史上最速の所要22場所で大関昇進。同年九州場所では最速タイの所要24場所で初優勝。モンゴル出身力士として初の賜杯を手にした。得意技は左差し、突っ張り。185センチ、137キロ。

 ◆タミル・ゴンブトゥレン

 1980年2月13日、ウランバートル市生まれ。両親は母国で屈指の資産家で兄1人。モンゴル第54小、中学時代は勉強、スポーツともにトップクラスだった。99年からドイツのセレネ大学とバイロット市立大学に留学してドイツ語を勉強。現在も在学中。日本語は朝青龍に教わって勉強中。家庭料理も得意。