<大相撲初場所>◇8日目◇19日◇東京・両国国技館

 東前頭16枚目の大砂嵐(21=大嶽)が、元横綱大鵬の納谷幸喜さんの命日に勝利で観衆を沸かせた。西前頭10枚目の遠藤(23)を突き落として6勝目。一周忌法要には参列できなかったが「私のおじいちゃん」と慕う存在に、土俵で成長した姿を示した。

 「大鵬親方ありがとう」。大砂嵐は遠藤に勝つと土俵下で目を閉じ、天国へ感謝の気持ちを伝えた。「私のおじいちゃん。ちょうど1年。勝ててよかった。立ち合い、かち上げ、突っ張り、自分の相撲ができた」。右のかち上げから激しい突き押し。中に入り込もうとする相手の頭を、左手で抑えて突き落とした。

 朝稽古後、まわし姿のまま急いだ。大鵬部屋の流れをくむ大嶽部屋に隣接する納谷家へ。仏前に「ケガをしないように見守ってください。力、スタイルを(教えてくれたこと)いつもありがとうございます」。この日の一周忌法要は、相撲を優先するため参列せず。土俵で勝利が大鵬さんの一番の喜び。同部屋9人中5人が相撲を取ったが、4人連続黒星。最後のとりでとなり、白星を届けた。

 1年前は新幕下。九州場所では新入幕まで一気に駆け上がった。だが千秋楽に負け越し。思い出した大鵬さんの一言がある。教習所から同期の銀星山と部屋に戻ると「ご飯を何杯食べたんだ?」。3杯だった。「俺は関取になるまで13杯食べたぞ」。九州後は1杯だったご飯もおかわりし、おかずの量も増やした。そして10キロ増。土俵上の重さが今場所の強さでもある。

 大砂嵐-遠藤戦には、懸賞が14本ついた。平幕同士の取組に10本以上つくのは約2年ぶり。注目度は高いが「まだ6勝。場所は終わっていない」と気の緩みはない。今年は三役を目指し、最終目標は横綱。信じて努力を積み重ねる。「大鵬親方という神様がいるから」。【鎌田直秀】