98年「松坂世代」以来の豊作といわれる「ハンカチ世代」が、待望のドラフトイヤーを迎える。早大・斎藤佑樹投手(3年=早実)のほかにも、実力派投手陣がめじろ押しだ。早大の最速154キロクローザー、大石達也投手(3年=福岡大大濠)は、来季から投打二刀流に挑戦する。

 大石に来季構想が伝えられたのは、11月7日の新チーム発足直後だった。応武篤良監督(51)に呼ばれ「最初はセンターで、最後は抑えと言われました」(大石)。登板時以外は中堅の守備に就き、打席に立つ。ドラフトイヤーは、6大学異例の「投打二刀流」に挑戦する準備を進める。

 高い身体能力から、3年春の早慶戦は遊撃手で先発出場した。投手を始めたのは高2からで、それまでは中堅手だった。もともと投手志望だが「優勝するため」と受け入れた。冬場は外野ノックと打撃練習にほとんどの時間を費やした。

 「本職」では6大学敵なしの実績を誇る。42試合106回を投げて、153奪三振。三振奪取率12・99と、完投すれば平均13奪三振の計算だ。11月のプロ選抜戦では巨人亀井を直球で3球三振、広島天谷は高めの直球で空振り三振に切った。試合後、プロ選手が口々に挙げたのが大石の名前だった。「高めの真っすぐで空振りが取れたのは自信になった」と手応えを感じた。

 大リーグスカウトからも熱視線を浴びる。だが「あんまり興味はないです。メジャーの選手とやってみたいっていうのはありますけど、行きたいとまでは…。日本のプロに行きたい」と話す。現時点では、国内プロからキャリアをスタートさせる考えだ。

 課題は変化球の精度と先発の実績(通算3試合1勝2敗)を挙げる。来季は斎藤が2年間付けた背番号「1」を引き継ぐ。互いに1位指名は確実だが「別のチームで戦ってみたい。高校時代も対戦したことないし」と思いをはせる。最速154キロのスピードを、来季どこまで伸ばすのか。中堅からマウンドに走る大石の姿には、「主役」以上に輝く可能性が詰まっている。【前田祐輔】