「生まれ変わって、もう1回野球ができるなら、また上級生の皆さんと野球がしたいです」

 早実・清宮幸太郎内野手(1年)が、敗戦後のインタビューで泣きながら話した言葉だ。赤いタオルを顔にあてて何度も涙をぬぐった。

 16歳の少年がこんなことを言うなんて…。純粋さと、豊かな表現力に驚かされた。

 毎度、試合前や試合後のインタビューで聞かれることはほとんどが同じような事柄だ。「ホームランを打ちたいか」「甲子園の大観衆や声援をどう思うか」「緊張はしないのか」など。テレビと新聞は別々に取材をするから同じことを2度聞かれることになる。

 それでも清宮はハキハキと自分の言葉で質問に答える。大きな声で話すことも彼の特徴だった。

 印象に残った「清宮語録」を挙げておきたい。

 「1本打たないと示しがつかないと思った」(1回戦の今治西戦で甲子園初安打)。

 「映画みたい。これからの人生でかけがえのない1本になります」(3回戦の東海大甲府戦で甲子園初本塁打)。

 「今日みたいなホームランが自分の形。1本目はソワソワしながらベースを1周しましたが、今日は味わいながら回りました」(準々決勝の九州国際大戦で2試合連続となる本塁打)。

 「自分の形さえ崩されなければどんなピッチャーも打てる」(準決勝の仙台育英戦に備えた前日練習後にコメント)。

 小学生時代から注目され、取材慣れしているとはいえ、ここまでいろいろなことを話す1年生選手は珍しい。最近は取材で余計なことを話さないよう指導しているチームも多いと聞く。そんな中で異色の選手と言えるのではないか。

 これから清宮はどんな選手になっていくのか。甲子園大会の後に行われるU-18ワールド杯への出場が有力視されている。それが終われば新チームで来春センバツ出場を目指す秋季大会が始まる。9月末には和歌山国体もある。

 清宮は「2年生になるんで今度は自分が軸になってチームを引っ張っていきたい」と頼もしかった。

 「甲子園は人を成長させる場所」と言われる。清宮はじめ、早実ナインは間違いなく成長した。一戦一戦、試合をするごとに強いチームになったと感じた。

 「このままじゃ終われない。もっと練習してパワーを付けて、しっかりと成績を残せる選手になりたい。どんなピッチャーも打てるようになりたい」。

 この夏初めて味わった敗戦が清宮をさらに成長させるはずだ。

 1年夏の甲子園通算成績は5試合で19打数9安打、2本塁打、8打点、打率4割7分4厘。5試合の入場者数は計20万3000人。スター選手への第一歩をしっかりと踏み出して、1年目の夏が終わった。