明徳義塾(高知)には作新学院(栃木)の好投手・今井達也(3年)の球種はすべて分かっていた。

 2点を追う1回裏1死一塁、3番西浦颯大内野手(3年)が高め直球を狙い打ち。弾丸ライナーが右翼ポールへ向かって飛んでいったが惜しくも切れた。

 試合後、馬淵史郎監督(60)は言った。「今井君は攻略した。(フォームの癖などで)球種は100%分かっていた。狙い打ちだった」。

 今井は大量得点差もあり5回で降板したが本塁打を含む5安打を浴びせ2点を奪った。1回には1死満塁、2回以降も毎回走者を送り今井を苦しめた。

 「今日の今井君はダメでしたね。普通のピッチャーだった。ウチがボール球を振らんから。とんでもない空振りもなかったでしょう。点差ほど力の差はないと思いましたよ」。

 さすがは甲子園で48勝を挙げている百戦錬磨の監督である。ただ、今井の攻略には成功したが失点が多すぎた。

 「守りが破綻して後手後手に回ってしまった。100-0で負けるのも1-0で負けるのも負けは負け。ただ5点以内。5-3や5-4が明徳の野球。守りの明徳ですから。4つエラーしたことが悔しい」。

 今回が7年連続出場。「個々の能力は高くない。チームワークと気持ちでやってきたチーム。ベスト4はほめてやりたい。頑張ればここまで来られるといういい見本」と馬淵監督は話した。

 選手のユニホームは真っ黒。ヘッドスライディングする選手の姿も目立った。明徳義塾と言えば試合巧者のイメージがあるが、今回は多少違った。

 「やるだけのことをやって力を出し切るということが大事なのかなと。奇策もあるが、確率の高いことを繰り返しやっていく方がいいんじゃないかと」。

 基本に忠実に、そしてひたむきに白球を追う。

 鳴門(徳島)を破り8強入りを決めた後馬淵監督はこうも言った。

 「ある日突然というのは一生懸命やっているやつに来るもの」。02年以来の優勝には届かなかったが、努力したナインに「ある日突然」はやってきたと言っていい。

 「春は絶対優勝します。面白い投手がおりますから。まあ見とってください。負けるたびに明徳は強くなるんです」。

 馬淵監督はこう言い残して甲子園を去った。