80年代に大学生だったころ、いわゆる「MTV」が大流行しました。今では当たり前過ぎますが、アーティストの歌と映像をミックスしたスタイルが当時は新しかったものです。

 そこで大好きだったのが「ZZTop」(ズィーズィー・トップ)という米国の3人組ロック・バンド。結成は69年だそうですが息の長い活躍に加え、当時のMTVの波に乗り、ユニークなビデオを制作。20歳前後だった私にはすでにオヤジでしたが本当にかっこよかった。

 異様に長いヒゲを伸ばしサングラスをかけた風貌。その後、日本でもクルマのCMに起用されたので私のように洋楽に詳しくない人でも知っている方は多いのではないでしょうか。

 90年代初め、ちょっとした仕事で米国出張の機会があり、あのラスベガスに足を運ぶチャンスまで巡ってきました。初めてのカジノでドキドキしていたら、遠くに人だかりができています。

 やじ馬になって近寄ってみると、映画を撮影するような大きなカメラの前に、なんと「ZZTop」の3人がギターを持って、立っているではありませんか。あとで分かったのですが楽曲「ビバ・ラスベガス」のMTVの撮影だったよう。(ちなみに同曲は、これは私より上の世代がしびれたエルビス・プレスリーのカバーです)。

 それにしても大好きな米国のバンドに遭遇するなど僥倖(ぎょうこう)以外の何ものでもない。同行していた人たちが不思議がるぐらい興奮してしまったものです。

 その「ZZTop」の曲「シャープドレスマン」を神宮球場で聴いたときは思わずニンマリしました。粋のいいロックでマウンドに登場するのはヤクルトのクローザー、バーネットです。

 今季、ヤクルト阪神戦の前に神宮の室内練習場で彼とすれ違ったとき。面識はまったくありませんが、つい「若いのにいい曲、使ってるじゃないの」的なことをいいかげんな英語を駆使し、話し掛けてみました。

 するとバーネットはなぜかビシッと直立し、「オーッ! アリガトウゴザイマス!」と笑顔を浮かべてくれたのです。単純な私は、それだけでいい男だなと思ってしまいます。さらに試合後、長髪をまとめ、かっこいい自転車で球場を出る姿も発見。さらに好感を持っていたのです。

 そんな彼がポスティングシステム(入札制度)で大リーグに復帰を狙うという記事が3日、日刊スポーツなどに掲載されていました。外国人選手なので普通にFAで出ていってもおかしくないのですが、ヤクルトに対する恩義的なものを感じているからこその行動のよう。

 あのときのバーネットの様子を思い出し、素直にいいなあと思いました。個人的にお願いしたいのは、来季、どこで投げてもあの曲で登場してほしいなということです。