ミラクル早実だ! 初回に5点を先行されるも、清宮幸太郎内野手(3年)の2試合連続となる高校通算82号などで2点差に詰め寄った。さらに8回裏には打者12人の猛攻で一挙10点を奪い、16-8の8回コールドで国士舘を下した。これで13年ぶり14回目の関東大会(5月20日から5日間、茨城)出場を決めた。27日の決勝は、帝京と日大三の勝者と史上初のナイター(午後6時開始)で、35年ぶり9回目の優勝を目指す。

 清宮は腹の底から叫び、拳を握った。6点リードの8回2死二塁、野村の2ランでサヨナラコールドでゲームセット。筋書きのない劇的すぎる幕切れに、普段は冷静な主将も喜びを爆発させた。

 スイッチは「敵失」だった。2点を追う8回無死一塁。清宮の放った投ゴロを、国士舘・深沢が二塁へ悪送球。併殺打の危機から一転、チャンスを広げ、1点差の2死満塁から代打・福嶋壮外野手(3年)の高校通算1号満塁本塁打でひっくり返した。連打と死球で再び清宮に回ると、今度は高々と打ち上げた飛球を中堅手が落球。2打席連続の敵失でお膳立てした。

 チームは初回に5失点した。少しだけ諦めの気持ちもよぎる点差だが、早実ナインは違った。

 清宮 正直、初回だったし、1点ずつ返せば大したことのない点数かなと。何とか粘って、後半勝負でいこうと話をした。

 清宮が練習中からいつも言い続けている言葉がある。「俺たちはバッティングがいいんじゃなくて、粘り強くやることで点が入るんだ」。主将の言葉をチーム全員で共有するから、野村も「普通にやれば5点は大丈夫かなと。7点くらいなら返せる」と真顔で言った。「逆転の早実」の意識がチームに根付いている証拠だった。

 清宮は結果でもナインを勇気づけた。4点ビハインドの3回無死走者なし。カウント2-2から右中間のスコアボードを越える、推定飛距離130メートルの特大弾を放った。今春は39打席ノーアーチと不調に陥ったが、15日の駒大高との準々決勝で2打席連続本塁打をマーク。2試合連続となる82号は、打った瞬間それと分かる清宮らしい1発だった。「最近では一番感触が良かった。気持ち良かった。自分のバッティングができた」と復調を宣言した。

 27日は神宮で史上初のナイター決勝に臨む。「自分たちが出なきゃつまらない。出るべくして出るんだという話をした」と、有言実行で決勝進出を決めた。「(和泉監督が)監督をやられて、1回も春は勝っていないと。ぜひ、優勝したいです」と東京大会の秋春連覇に照準を合わせた。【久保賢吾】