<国体高校野球:都城商3-2花巻東>◇29日◇準決勝◇ハードオフ新潟

 夢をありがとう、花巻東ナイン-。花巻東は2-3で都城商(宮崎)に敗れ、目標の日本一には届かなかった。それでも155キロ左腕、菊池雄星投手(3年)を筆頭に、今春センバツ準優勝、夏の甲子園で4強入りしたチームは、最後の試合も胸を張って戦った。地元岩手、そして東北に大きな勇気を与えたナインの、激動の1年に幕が下りた。

 笑顔が絶えなかった。相手ナインと握手する時も、ベンチを引き揚げる際も、元気な声が飛び交った。打線が散発3安打に抑えられての再逆転負け。最後の全国舞台で頂点はつかめなかった。だが花巻東ナインはこれまでと同様、持ち前の元気をフルパワーにして最後の試合を締めくくった。

 菊池という絶対的存在の力が大きかったが、最大の戦力は「結束力」だった。試合後、川村悠真主将(3年)が「雄星は注目されても、ずっと謙虚だった。だから、みんなもついていけた」と話すように、常にナインの心はエースの下に1つだった。菊池も「高校野球で得たもの?

 仲間です」と笑顔で応えた。

 3年生は今後、別々の道を歩む。佐々木洋監督(34)は「彼らと野球ができたことを誇りに思う。これからも大学などで学んで、応援してくれた県民や地域に貢献できるような人材になってほしい」と期待した。部員の小野寺諒(3年)は地元一関市の役場で働くことを希望し、地方公務員試験に向けて勉強中。合格すれば同校初の、新卒での公務員誕生になるという。指揮官の思いと同様、ナインも地元に対する恩返しの気持ちは強い。

 チームは30日、バスで花巻市の学校に戻る。「自分の力だけじゃなくて、地元の方の協力もあって、ここまで来ることができた。帰ったら県民のみなさんに『ありがとう』と言いたいです」と菊池。みちのくから全国に旋風を巻き起こしたナインの胸には「感謝」の心があふれていた。【由本裕貴】