ミスターの目の前で偉大な記録に肩を並べた。巨人坂本勇人内野手(35)が今季2度目、プロ通算186回目の猛打賞をマークした。1回に左前先制適時打、5回に右翼線二塁打、8回にも右前打の3安打で長嶋茂雄終身名誉監督(88)に並ぶ、プロ野球史上歴代3位タイに浮上。球団創設90周年特別試合「長嶋茂雄DAY」として開催され、サプライズで東京ドームを訪れていた長嶋終身名誉監督を坂本がメモリアル打と勝利で歓迎した。伝統の一戦で首位阪神に競り勝ち、2ゲーム差に迫った。

   ◇   ◇   ◇

目の前でミスターの記録に並んだ。8回先頭。坂本が阪神加治屋の外角低め146キロ直球を逆らわずに合わせた。一、二塁間を突破する右前打。4月20日広島戦以来の今季2度目の通算186度目の猛打賞に「長嶋さんのセレモニーの日に光栄なこと。素直にうれしく思います」。1回2死一、二塁からは先制左前打を放ち、5回1死からは右翼線への今季初となる二塁打を放った。

長嶋終身名誉監督が見つめる前での一戦だった。右袖、帽子、ソックスには「3」があしらわれた特別仕様のユニホームで戦った。5回終了時、アナウンスが流れた。

「4番 サード 長嶋 背番号3」

ミスターが三塁側から車いす姿で登場した。自軍はベンチ前に整列で出迎え、スタンドは総立ちの「長嶋コール」で沸いた。

一塁側ベンチ裏のミラールームの壁には「勝つ! 勝つ! 勝つ!」とペイントされている。94年の「10・8決戦」で当時の長嶋監督がミーティングでチームを鼓舞した檄(げき)が、今も脈々と受け継がれている。

坂本も口癖のように繰り返す。「チームが勝てるように」。個人でも歴代14位通算2347安打、同4位の446二塁打など数々の記録を打ち立てる中で、勝利至上主義が前提にある。

19歳だった2年目の2月、宮崎キャンプでミスターから「君の将来を期待している」と声をかけてもらった。同年のシーズンからレギュラーを勝ち取った。右手親指末節骨の骨折で戦線離脱した3年前はジャイアンツ球場で直々に打撃指導を受けた。

先人への感謝を胸に戦う。「日本のプロ野球の人気は先輩たちが築いてくれたもの。今、何万人の前でプレーできるのも、そういう人のおかげ」と言う。阿部監督からも「こういう日にピッタリじゃないですか。自分の体にむちを打ってやっている姿も見えますし、若い選手の教科書になってくれていると思います」とたたえられた。

今季からミスターも主戦にした三塁に本格コンバートされた。プロ18年目。背番号6が重厚な伝統を受け継ぎ、この先の未来へとつないでいく。【上田悠太】

【関連記事】巨人ニュース一覧