<高校野球茨城大会:藤代2-0常総学院>◇27日◇準決勝

 時代の波を感じつつ、常総学院・木内幸男監督(80)の監督生活55度目の夏が終わった。「監督をやめるからと生徒にプレッシャーをかけ過ぎた。オレは言わなくても、マスコミから言われる。子供が硬くなって、打撃(の体)をなしてない」と敗因を語った。打率1割3分3厘の和田丈主将(3年)を6番から、初戦以来の3番に抜てき。以前ならはねつけたはずが、選手の意見を採用した。「相談するだけ年を取った」。3打数無安打の和田丈は「打撃が足りなかった。悔しい。力不足」と唇をかんだ。

 甲子園で勝つため、力で押すチームを目指してきた。2年前、甲子園で体格差のある九州国際大付(福岡)に完敗。練習時におにぎりを食べさせ始め、パワフルな打線を形成した。9安打を放つも「木内マジック」でかき回すことはなく、強攻策で2併殺打。ライナー4本が野手の正面を突く不運もあった。今大会初めて許した先制点が、重くのしかかった。

 腎臓がんを患った自らの健康より、選手を気遣っていた。3月に隣県福島の原発が爆発。「セシウムだ何だとあるかもしれない。練習をやめる決断ができるのはオレだけ」。春から休んだのは数日。ベンチから「オレのためじゃなく、自分たちのために頑張れ」と陣頭指揮を執った。昨年は40日もの入院を経験し、歯も既に13本抜けた。膝の動きを円滑にするヒアルロン酸注射を打ち、最後まで「勝つ喜び」を伝えたかった。

 代名詞の木内マジック。「観察力。欠点といいところを覚えておく」と種を明かした。相手投手のタイプに合わせ選手を起用。例年、多様な投手を用意するが、練習で自チーム打者の長所を見抜くのにも役立っていた。今後については「もう戻りませんよ。年齢的にこれ以上は無理。やっと解放された。ガハハ」と豪快に笑った。甲子園名物の木内節。最終章となった。【斎藤直樹】