<センバツ高校野球:花巻東5-2利府>◇1日◇準決勝

 花巻東(岩手)菊池雄星投手(3年)が、完投&2試合連続V打で悲願の東北勢初優勝へマジック1とした。3回に先制2ランを浴びて今大会初失点したが、5安打7奪三振で完投。1点を追う6回には自ら逆転2点適時打を放った。利府(宮城)を5-2で破り、岩手県勢初の決勝進出だ。

 菊池は、両手で自分のほおをたたいた。「気持ちが乗っていなかった」。自らを戒め、上った8回のマウンド。打者も慌てて構えるほどの早いテンポで投げ込んでいく。3者凡退に切り抜けると、9回1死一塁も遊ゴロ併殺で切り抜けて試合終了。派手なガッツポーズで笑顔を振りまいた。

 「疲れもだいぶあって、この大会で1番苦しい投球でした」と反省する。3回に1番遠藤に先制2ランを浴び、4四球と制球も乱した。それでも1点を追う6回2死満塁、自ら中前へ逆転の2点適時打。2番手で登板し、自ら勝ち越しの一打を放った前日の南陽工戦と同様、この日も投打のヒーローとなった。連続無失点イニングは24回で途切れたが「最終的に1点勝っていれば、それでいいので」と無欲な笑顔を見せた。

 2日、清峰との決勝に臨む。今村との投手戦の注目度は高い。「高校生を代表する投手と戦えるのは楽しみです」と闘志をあらわにした。面識はないが、今大会のメディカルチェックの際に今村の背中を見た。「体も大きいし、球に伸びもある。いつか対戦する日が来るのかなと思っていた」と予感していた。

 これまでもライバルの存在に刺激を受けてきた。1年秋の県大会、一関学院・菊地翔太投手との投手戦に敗れた。「キクチ対決」という見出しの翌日のスポーツ新聞記事を切り抜いて寮の部屋の壁に張り、そこに「恥を知れ」と書き込み、自らを奮い立たせた。全国中学大会で優勝経験のある岩手・福岡中出身の光星学院(青森)のエース下沖勇樹(3年)にはフォークの握り方を聞くなど、積極的に吸収してきた。

 左右の好投手対決という周囲のヒートアップにも冷静だ。「今村は大会NO・1のピッチャーだと思う。胸を借りるぐらいのつもりで楽しみたい」と淡々と話す。ただ、みちのくに春夏通じて初の大旗を持ち帰るためには、やはり負けられない。【由本裕貴】