長かったトンネルを抜けた。東大が、10年秋の早大2回戦から続いていた連敗記録を「94」で止めた。4-4の延長10回1死二、三塁から4番楠田創外野手(2年=桐朋)の二ゴロ(記録は野選)の間に決勝点。適時打は山田大成内野手(2年=桐朋)の1本だけで6点を奪い、1694日ぶりの白星をつかんだ。優勝の可能性を残していた法大からの1勝に、三塁側応援席は総立ちになった。

 1度も勝利を味わったことのなかった東大ナインを、大歓声が包み込んだ。ついに、勝った。抱き合って喜び、涙を流す選手もいた。浜田一志監督(50)も、12年11月の就任後初勝利。「100連敗するのではというプレッシャーの中で、こんなにドラマチックな逆転で勝てるとは思わなかった。本当にうれしい」と勝利の余韻に浸った。

 タイムリー1本でも、絶大な信頼関係で得点を重ねた。延長10回、連打と犠打で1死二、三塁。5回にスクイズを仕掛けて相手の暴投を誘い、逆転した場面と同じ形を作った。監督は二、三塁走者と打者の楠田を呼んだ。指示は「楠田を信頼して打たせる。ゴロゴーだ」。楠田が放った強烈なゴロを二塁手が一瞬はじき、三走の長藤祥吾内野手(4年=山形東)がホームを陥れた。決勝打点を挙げた2年生4番の楠田は「ランナーの足が速いので、前に転がせば大丈夫だと思った」。長藤も「バントや進塁打など、みんながやることをやった結果」と胸を張った。続く5番山田の一塁ゴロでも三走が迷わず本塁に突入。再び相手の野選を誘って2点リードを奪った。

 勝つため、内野ゴロで1点を取る練習を繰り返してきた。メニューはほぼ実戦形式で、常に得点圏に走者を置いた場面を想定。スクイズやエンドランなど「小技」に磨きをかけた。さらに、4年生を中心に「ヒットなど結果だけを求めず、良いプレーはほめる」という空気をつくった。早大や立大に惜敗した悔しさもあったが「接戦できた。次こそ勝てる」と切り替えられるようになり、逆転されても下を向くことはなくなった。浜田監督は「実力で勝てる相手はいない。野球の神様が普段の努力を見てくれていた」と目を細めた。

 打者によって守備位置を極端に変え、全員が相手投手のデータを把握する頭脳的な野球は健在。今季は小技に加え、リーグ最少3失策の堅い守備も手に入れた。同監督は「アドバイスをいただいた他大学のベテラン監督さんや、応援してくれた方々に勝利を報告したい。勝ち点を取って、秋は最下位脱出だ」と力強く言った。ようやくつかんだ自信を胸に、02年秋の立大戦以来13年ぶりの勝ち点を奪いにいく。【鹿野雄太】

<東大連敗アラカルト>

 ◆4年間未勝利 今回以前のワーストは70連敗(87年秋~90年秋)で、87~90年の間に87年秋の1勝があった。今回は11~14年に勝てず、4年連続未勝利はリーグ史上初めてだった。

 ◆完封負け49 94連敗中、半分以上の49試合は完封負け。11年秋には早大にリーグ最多タイの26安打を許し0-23。13年春には高梨(早大)に完全試合、同秋には加嶋(慶大)にノーヒットノーランを許した。

 ◆惜敗も 今回の連敗期間中、引き分けが2試合、1点差負けは8試合。11年秋の法大1回戦は0-1でサヨナラ負け。