ソフトバンクが延長サヨナラ勝ちで、優勝マジック「38」を点灯させた。日本ハム戦で延長11回1死二塁、代打の本多雄一内野手(30)が右前にサヨナラ打。今季初の7連勝を飾った。7回に同点とされても、以降はブルペン陣が勝ち越しを許さない盤石の試合運び。最短胴上げは8月29日。スピード優勝の楽しみも加えながら、連覇に突き進む。

 新千歳空港の待合所で、工藤公康監督(52)はタブレット端末の画面を見つめていた。タッチパネルに触れ、何度か再生、巻き戻しを繰り返した。「腰の旋回ができていないな…」。ぽつりとつぶやいた。5月24日の日本ハム戦に大勝。試合後に空路で次の遠征地・名古屋に向かう途中だった。余韻に浸ることはなかった。その日、2軍降格を通告した左腕飯田のフォームを分析していた。

 現役時代から探求心や向上心は人並み外れていた。なぜ打たれるのか。なぜ打てないのか。指揮官は弱点や課題と徹底的に向き合う。3~7番に3割打者がズラリと並ぶ強力打線だが、それで良しとしない。打率2割前後の捕手陣にはハッパをかけ続けた。「キャッチャーだから、打たなくていいわけじゃない」。主軸、脇役にかかわらず、向上を求める。それは日替わりヒーローを生む土壌になっている。

 バッテリーがイニングごとに会話を交わす風景が当たり前のようになってきた。春季キャンプから取り組んできたことだ。工藤監督は言う。「相性はあるが、みんなに打たれるわけじゃない。どうやって打たれているのかを調べれば、次はどうやって防ぐのかを考える。打たれていた選手に打たれなくなる。勝ってない相手に勝てるようになる」。昨年の覇者だけに、個々の能力は高く、選手層は厚い。そこに指揮官が新たなエキスを加え、スキのないチームが完成しつつある。ソフトバンクは6月12、13日を最後に連敗がない。