残暑お見舞いの快勝だ! 虎の満塁男が堅首の勝利を運んできた。鳥谷敬内野手(34)が4回、2死満塁で勝ち越しの2点二塁打。今季満塁で7打数5安打の勝負強さを発揮した。8回にもダメ押し三塁打を放ち、巨人戦3連敗ショックを振り払う2連勝、2位巨人に1・5ゲーム差をつけた。21試合に及ぶ長期ロードの勝ち越しも確定。夏バテ知らずで突っ走れ!

 弾丸ライナーのスピード感が心地よい。「東京ドームの悪夢」の残像を勢いよく脳裏から消し去った。鳥谷だ。4回、内野安打2本と野選で2死満塁。その初球、DeNA三嶋の内角143キロ直球を狙い澄まして引っ張った。勝ち越しの右越え2点二塁打。猛虎が再加速を始めた瞬間だった。

 「流れ的には、すごく大きな点数だったかな」

 野球の神様もまだ、どっちつかずの状態。ゲームの主導権を力ずくで奪った。今季は満塁で7打数5安打。「たまたまです」と照れ笑いだ。3点リードの8回2死一塁では右中間を破る適時三塁打。三宅伸和が持つ球団5位の44三塁打に並び、ダメ押しした。巨人に敵地3連敗後の2連勝。残り4試合の状況で早くも長期ロード勝ち越しを決め、虎をよみがえらせた。

 「清宮くんは映像で見たよ。でも、すごいヤツはこれまで山ほど見てきたし。大島に武内に…。もう、いちいち驚かない(笑い)」

 高校野球の季節が終わった。ふと、自らの学生時代を思い返し、自虐的に笑った。聖望学園時代は同じ埼玉県内の同い年、高校通算86本塁打を誇った埼玉栄・大島(元西武)の長打力に度肝を抜かれた。早大3年時も、2歳下で智弁和歌山出身の武内(ヤクルト)の技術に「本当に1年生?」と衝撃を受けた。エリート街道を突っ走ったと思われがちだが、幾度となく“挫折”を味わい、球界屈指の努力を積み重ねてきた。

 そのストイックな姿勢は今も周囲を驚かせる。ロッテ井口らと沖縄名護自主トレに励んだ今年1月のこと。地元の人々の計らいで昼食用の弁当がメンバー全員に配られる毎日。鳥谷は心から善意に感謝しながら、「僕の分は大丈夫です」と丁重に伝えたという。揚げ物などの摂取を避け、昼はソーセージ形のプロテインバーだけの生活を続けた。「それは自主トレ中だけだって」とはぐらかすが、オフから妥協なき肉体作りに励んでいるから、34歳の今なお試合に出続けられる。

 4月に右脇腹を負傷。6月には背中を死球でえぐられ、深刻な状態が続いたが「もう大丈夫だから」とサラリ。日々、当たり前のようにグラウンドに立ち、ここぞの場面で責任を背負う。走攻守でナインを落ち着かせる、頼れるリーダーだ。この日は3安打に加え、6回には華麗なジャンピングキャッチも披露。「目の前の1戦1戦を大事に戦っていく」。説得力あるキャプテンの言葉に導かれ、虎が首位の座をガッチリ固めにかかる。【佐井陽介】

 ▼鳥谷は今季、満塁での打席で7打数5安打で打率7割1分4厘、12打点。打率はセ・リーグ規定打席到達者中トップ。打点もセ全打者中、坂本(巨人)、丸(広島)、山田(ヤクルト)と並び最多。

 ◆鳥谷今季の達成記録 開幕前の40三塁打から4本を加え、球団5位タイに浮上。7位は和田豊(42本)。ほか、鳥谷は通算820四球で21日に掛布を抜いて球団トップに。1729安打は球団4位。あと10安打で3位和田に並ぶ。711打点は8位で、21日に桧山の707打点を追い越している。出場1657試合は球団7位。連続フルイニング出場は544試合となり、既に愛甲猛(ロッテ)を抜いてプロ野球5位。