「12に伸びた連戦が、栄光のかけ橋だ~」。優勝を占う3位巨人との「伝統の一戦」が8日、午後4時過ぎに降雨中止となり、阪神は18日DeNA戦(横浜)から29日DeNA戦(甲子園)までの12連戦が確定した。延べ6球場で7カードをこなす過酷な日程にもひるまない守護神呉昇桓(33)の頼もしさは段違い。勝って勝って、最後まで首位はゆずらん!

 曇天から落ちる雨粒にも闘志は変わらなかった。試合前、室内練習場での調整を終えた阪神和田監督は、ゲームが中止になる懸念にも、こう言った。

 「やるよ」

 だがその数分後、午後4時過ぎに中止が決定した。休養日だった前日7日、異例の全員練習を行って臨んだ天王山第1ラウンドは“水入り”となった。そして同時に、今月末に待っていた試練がさらに厳しさを増すことになった。

 この日の中止分が予備日である28日に入るため、18日から29日まで12連戦を戦うことになったのだ。東日本大震災の影響で日程が過密になった11年に13連戦をこなして以来となる、大型連戦。横浜でのDeNA戦を皮切りに本拠地に戻って優勝争いのライバルであるヤクルト。そして、再び東上して、敵地で巨人と2連戦、ナゴヤドームで中日、マツダスタジアムで広島とビジターが3カード続く。最後に甲子園で巨人、DeNAと戦ってようやく終わる12連戦。移動も伴う今季最大の試練と言えるだろう。

 「望むところや! それくらいの気持ちでいきたいね」

 8月末、広島戦の中止で10連戦が決まった際に指揮官はこう言って覚悟を示した。その試練がこの雨でさらに2試合増えた形だが、チームの中でそれを憂う者は見当たらない。タフネスを誇る守護神呉昇桓がみんなの気持ちを代弁するように言った。

 「自分の中では連戦が続いても変わりはない。韓国でも9連戦もあったので問題ない」

 来日1年目でタイトルを獲得した昨シーズンも証明したように、ペナントレース終盤やポストシーズンになれば、イニングまたぎ、連投は当たり前。その中でどんどん状態を上げていく驚異の鉄腕は、大型連戦ではまさにチームにとっての命綱となるはずだ。

 王者巨人へのリベンジをかけた甲子園決戦。優勝をかけた最初のハードルに集中している猛虎には、さらに大きなハードルが待ちかまえている。【鈴木忠平】

 ◆阪神の大型連戦 和田監督が就任した12年以降の最長連戦は9試合(4度)で、12連戦となれば最長。球団では、11年に13連戦した例がある。東日本大震災のため開幕が当初の3月25日から4月12日へと18日間延期。シーズン終盤の日程が過密となり、10月4日ヤクルト戦から16日広島戦まで13日にわたって試合を行った(9勝4敗)。このほか近年では、93年10月9日広島戦~同18日ヤクルト戦の10日間で、ダブルヘッダー(10日広島戦)を含み11試合(6勝5敗)。80年には9月11日巨人戦~同21日ヤクルト戦に11連戦(6勝5敗)。

 ▼阪神呉昇桓の来日後最長は4日間連続登板で、今季8月11日中日戦(京セラドーム大阪)から同14日ヤクルト戦(神宮)。昨季の最長は3日間連続で、計4度。今季は3日間以上の連続登板が既に5度ある。

 ▼18日からの12連戦では、大阪-横浜-大阪-東京-名古屋-広島-大阪と移動。期間中の移動が5度あり、うち4度はデーゲーム後の移動。総距離は2851・8キロ。ちなみに今夏の高校野球期間中の長期ロードは7カード21試合で3555・4キロ(いずれもJR駅起点)。