日本ハム斎藤佑樹投手(27)が、待望の今季初勝利を手にした。ロッテ21回戦に今季6度目の先発。要所で駆使するフォークがさえ、6回を5安打1失点に抑えてチームを3連勝に導いた。昨年9月29日西武戦以来、352日ぶりの白星を挙げ、この日のソフトバンクの優勝を阻止。クライマックスシリーズ(CS)での登板に向けて大きくアピールした。

 試合中に降りだした雨が、歓喜のシャワーのようだった。斎藤は次々と笑顔でチームメートから祝福を受けた。チーム130試合目での今季初勝利。「2桁勝利をしているピッチャーがたくさんいる中で、この時期の1勝。はたから見たら、たかが1勝かもしれないけど、僕にとっては、すごい大きな1勝。うれしいより、ホッとしました」。352日ぶりの白星に、本音があふれ出た。

 フォークを軸に試合をつくった。「カウントを取るボール、空振りを取るボールを投げ分けました」と、大胆に初球からでもストライクゾーンに落とす。追い込めば低めに制球。直球も効果的に配し、的を絞らせなかった。奪三振はゼロも「今日は三振を取れなくて、打たせて取る投球。野手が守ってくれて、助かりました」と、序盤から援護を受けた野手陣に感謝した。

 どん底の経験を心に留め、静かに封印している。12年日本シリーズで右肩を故障後の日々を記録した動画。再起をかける地道なリハビリ、新たな投球フォーム固め…。過程を自身のスマートフォンの動画で記録した。「つなげたら、どれだけの長さになるんですかね」。メモリーの容量がなくなれば、個人パソコンへデータを移動。「さすがに、もう見ない。でも、消せない」。再生しなくとも、お守りのように保存する。

 好調だった8月に1軍で勝てなくても、パソコンに眠る過去を思えば大したことはなかった。8月23日の抹消後は「気持ちを切らさないように。その辺は成長したポイントだと思う」。CSへ向けてのアピールも成功。負ければV逸の可能性もあったが「自分自身にかけるプレッシャーの方が大きかった」。4月2日ロッテ戦。4回までに8点の援護も、勝てなかったことが苦難の起点。栗山監督も「この2年、苦しんできた。良かったと思う」と喜んだリベンジの1勝。大きな手応えを得て、再出発を切った。【木下大輔】

 ▼日本ハム斎藤が昨年9月29日西武戦以来の勝利。プロ通算14勝のうちロッテ戦は4勝目で、カード別勝利数では西武戦と並ぶ最多となった。QVCマリンではこれで3勝0敗。6回以上投げたのは昨年7月31日ロッテ戦(6回1失点)以来になる。