虎が首位から陥落した。それでも、超変革の兆したっぷりの猛攻撃や。打線は前日まで湿りがちだったが、金本知憲監督(48)のハッパに応えるように今季最多の15安打。体調不良のためゴメス、ヘイグの両助っ人を欠く国産オーダーを強いられたが、プロ初3番の江越大賀外野手(23)が猛打賞だ。16年の甲子園開幕3連戦で、カード負け越しを初めて喫したが、やはり今年の虎は違う。

 「このままズルズル終わったら何も変わっていかない! 何とかしろ!」。7回裏の円陣。金本監督がハッパをかけた。今季の旗印「超変革」。その要素は諦めない心だ。指揮官の言葉を体で示したのは初めて「3番中堅」でスタメン起用された江越だ。4点差の9回。先頭で打席に入ると広島永川から三塁へのボテボテのゴロ。一塁へ全力疾走し、最後は頭から飛び込んで内野安打。今季初の猛打賞を決めた一打が猛攻のキッカケとなった。

 福留が右前打で続くと今季初スタメンの今成が死球で無死満塁。広島ベンチはたまらず抑えの中崎を投入したが西岡もすかさず右前適時打だ。続く北條の一ゴロでもう1点。さらに代打狩野の内野安打でついに1点差に迫った。4万6414人をのみ込んだ甲子園のボルテージが最高潮に達した2死一、三塁。一打同点、長打なら逆転サヨナラの土壇場でルーキー高山は見逃し三振。4時間28分の熱戦は黒星で終わったが、虎党の脳裏に、超変革への兆しは刻まれたはずだ。

 苦しい試合だった。ゴメスが腰痛、ヘイグは発熱で欠場。クリーンアップの助っ人2人が不在のため、3番に江越を入れ、7番には北條がプロ初スタメンで並ぶ「国産打線」で臨んだ。その窮状で意地を見せたのが江越。3日DeNA戦(横浜)で今季1号を放つと、前日まで出場4試合連続で本塁打と絶好調。しかし、金本監督の指導は止まらない。この日も試合前、ティー打撃から付きっきり。江越のバットを持ち「もっと先を細くしないとしならんぞ」「マスコットバットはもっと重くしろ」と細かく指示。熱血指導を受ける男は、5戦連発とはいかなかったが、5打数3安打1打点で盛り立てた。

 江越 最後は何とか生きようと思って頭から行きました。3番は特に意識しませんでした。勝ちたかったです。

 金本監督 このままズルズル終わったら何も変わっていかないよ、と言った。諦めない姿勢は絶対出してほしい。執念を出していくのが変わっていこうという第1歩だから。それでシラッとやるようならチームは終わってるよ。

 今季初のカード負け越し。そして首位陥落。だが、国産打線の今季最多15安打は諦めない姿勢のたまものに違いない。【編集委員・高原寿夫】

 ▼阪神の出場選手が全員日本人だったのは、13年9月15日ヤクルト戦(神宮)以来。このときは先発小川に6安打完封を許し0-9。日本人メンバーだけで2桁安打となると、12年8月19日ヤクルト戦(神宮)で7-1と快勝して以来。